二年目の春・9

「今日でこの店も最後ね。」

一方厨房の仕込みをしてる少女達も、麻帆良祭最終日に少し感慨深いものを感じていた。

早いところでは前年の麻帆良祭が終わると翌年の準備を始める麻帆良祭において、イベントや出し物の綜合トップは取るのが至難の技になる。

歴代のトップは後に流行になったような物もあるし、資金や技術だけではなし得ない運の要素も必要だと言われる。

中等部初の綜合トップに輝いた前年を経ての今年は、注目度も期待値も前年の比ではない。

ただ少なくともまぐれ当たりだと言われたり、期待外れだと言われることがないだろう繁盛ぶりに少女達はホッとしている。


「来年はもうこのメンバーでやることはないしね。」

かつて麻帆良祭の綜合ランキングで連覇を成した者達は居ない。

そもそもサークル以外の綜合トップ自体、歴史的に稀であるのだ。

少女達も来年は高等部に進学する。

ほとんどは同じ高等部に進むが、クラス替えがあるので同じメンバーになることはない。

それにクラスとしての出し物に一番燃えるのは中等部だと言われている。

高等部では部活やサークルが中等部以上に盛んになるし、アルバイトをする学生も出てくるのでクラスとして纏まるのが難しくなるらしい。

高等部以上で麻帆良祭での活躍を望む者は麻帆良祭の出し物で上位の常連サークルに入る事が多かった。

無論クラス単位で盛り上がる者達もいる。

しかし中学三年間、特に今のメンバー以上の麻帆良祭は二度とないことをみんなが理解していた。


「マスター。 来年はどうするの?」

「来年の話を今されてもなぁ。 来年考えるんじゃねえか?」

随分と濃い中学生活になったが、元々個性的だったA組を更に濃くしたのは紛れもなく横島になる。

まるで火事場にニトロをぶちまけるような横島は、何が起きるか分からない面白さがあった。


「何をしても目立ちそうネ。」

またいつかこうして一緒にばか騒ぎしたいと思わせる何かが横島にはある。

それは超鈴音とて同じだった。

自分の歴史の横島は何処で何をしていたのだろう?

何処かの町で喫茶店でもやりながら、歴史に残らぬ騒ぎを起こしていたのだろうかと思う。

話してみたかった。

未来のことや、これから起きるかもしれない魔法世界の終焉を。

話したところで何か出来るとは思わない。

しかし横島がどんな顔をして何を思うのか、超鈴音は聞いてみたかった。

魔法世界の失敗は魔法の秘匿に固執したことだと超鈴音は考えていたし、それは今も変わらない。

基本的な考えとして公開するべきだし、地球も魔法世界も素直に魔法と向き合うべきだと考えている。

そうすれば自分の歴史には居ない英雄が現れるかもしれない。

そう思うと、酷く残念に思えて仕方なかった。



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