二年目の春・9

朝食を食べると仮設店舗に移動して、最終日の仕込みを行う事になる。


「ごみ、はっけん!」

「全く。マナーの悪い人達ね!」

横島や木乃香達が仕込みを始める中、タマモは美砂達と周辺のごみ拾いをしていた。

周辺にはゴミ箱もあり委託を受けた清掃業者がゴミを回収しているが、やはりマナーの悪い人は何処にでも存在する。

まだ一ヶ所にゴミを纏めてる人などマシな方で、空き缶やベットボトルに少女達が販売した一口揚げパンの容器などをその辺にポイ捨てしてあると呆れて物が言えなかった。

尤もタマモはゴミを拾い綺麗になることが嬉しいようで、楽しげにゴミを拾っていたが。


「麻帆良祭も最終日ね。 タマちゃん。今日でお祭り終わりなのよ。」

「えー! もっとおまつりやりたい!」

「そうだよね! もっとお祭りやればいいのに!」

「うん!」

脱線したりしながらもみんなで話し合い準備をして楽しんだ麻帆良祭が、タマモは楽しくて仕方ないようだった。

そんなタマモに円は今日で終わりだと少し残念そうに語ると、タマモと桜子は終わりたくないと抗議の声をあげる。

三日間の祭り本番に準備期間を加えると長いこと時間があるように感じるが、やはり終わりを意識すると寂しいのが本音であった。


「夏になれば、また別のお祭りもあるわよ。それにイベントもいろいろあるわ!」

「そうね。 ハニワランドのお祭りも今年は行ってみたいわね。」

「なつはりょこうと、うみにいくんだよね!」

麻帆良祭が終わればタマモが麻帆良に来て一年になる。

みんなで海に行った事や一緒に遊んだことなど去年の夏を思い出したタマモは、今年の夏が楽しみで仕方ないらしい。

加えて少女達の家族も呼んでみんなで行く予定の旅行も今年はあり、タマモはそれもまたずっと楽しみにしている。


「たくさん。 想い出作ろうね!」

「うん!」

今日という日は二度とない日なのだ。

例え時間を越えようとそれは変わらない。

キラキラと純真な瞳で明日を見つめるタマモに、美砂達は今日この日を大切にしようと改めて思う。

超鈴音のように過去を変えようなどと思わないように。

タマモが忘れたいと願うようなことのないように。

今日この日を一生残る想い出にしたい。

いつの日かタマモが大人になり、一緒に今日この日のことを笑いながら話せる日を楽しみに美砂達はタマモと共にゴミ拾いを続けていく。


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