二年目の春・9

麻帆良祭もいよいよ最終日となった。

史実と違い告白の強制成就や超鈴音の計画も武闘大会もないので、何の懸念もない穏やかな三日目となる。


「なんとか何事もなく終わりそうじゃの。」

学園側の体制も関西の助っ人と人に擬装したハニワ兵達の活躍もあり、例年より重厚な布陣であり成果は上々だ。

無論トラブルや問題は大小様々あったが、告白の強制成就や超鈴音の計画もないので比べると遥かにマシではあった。


「最後まで気を抜けませんが、全体的に順調です。」

近右衛門は魔法協会幹部と早朝から打ち合わせをしているが、現状の唯一の懸念である秘密結社完全なる世界も、最高幹部の生き残りであるデュナミスとフェイト・アーウェルンクスの方針の違いから来る対立や。

クルト・ゲーデルの逮捕とその余波の情報収集に忙しく、麻帆良に目を向ける余裕は全くない事でひとまず安堵している。

歴史の修正力のような何かが起きるのではと懸念していたが、実際には少なくとも麻帆良ではその懸念は無縁だった。


「最後まで怪我や事故のないようにの。」

実際近右衛門は各種イベントで挨拶をしたりと忙しく、後は関係者に任せるしか出来ない。

時間もないので最低限の打ち合わせを終えて幹部が部屋を出ていくのを見送り、窓から見える麻帆良の景色を眺めていた。

早朝の僅かな時間が、麻帆良祭期間中では数少ない静かな時間になる。

ただそんな早朝ですら出し物やイベントの屋台やセットの破損した場所の修理などで、すでに動いている人がいる。

朝の鳥達の囁きと何処からか響いてくるトンカチを使う音に、今日も賑やかになりそうだなと思う近右衛門自身も麻帆良祭が楽しみであった。


「ねえ、おしょうゆ取って。」

「今日で最後。 頑張るポー。」

一方横島宅の朝は賑やかだった。

異空間アジトで一日休んだ少女達がそのまま横島宅に泊まったからであり、他にも麻帆良祭期間中滞在してるハニワ兵達も居たのでみんなで賑やかな朝食になっている。

朝食は和食で自家製の漬物や梅干しに、焼き魚やだし巻き卵に野菜のおひたしなどが中心だった。

日中はあれこれと食べるので朝くらいはシンプルにカロリーを抑えた食事にしたらしい。


「すっぱい」

タマモはそんな賑やかな食事の風景が好きらしく、ニコニコとみんなが食べるのを見ながら自身も朝食を食べている。

酸味が強い梅干しに一瞬顔を歪めつつ、その味は嫌いではないようでご飯を口いっぱいに頬張り満足げに食べていた。

お昼や夕食を賑やかに食べる事は珍しくないが、朝食をこうしてみんなで賑やかに食べるのはあまり多くないので嬉しいようであった。


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