二年目の春・9

その後少女達は結局、朝食を食べて寝る事になる。

ご飯を食べて一息つくと眠気が襲って来て、起きたのは夕方近い午後だった。

横島とタマモは数時間で目を覚ましお昼には起きていたが、少女達が寝ているので起きていた茶々丸と睡眠が必要ないチャチャゼロと初音と鈴江と一緒に近所を散歩したりしている。

平行世界や魔法世界の件は、正直なところ明確な答えが出なく、また現時点では答えを出す必要もない。

興味深い話であるので話題にはなるが、行き詰まると話題を変える程度の話であった。


「うーん。 昼と夜が逆転したわね。」

「何言ってんの。 このくらい余裕よ。 余裕。」

夕方近くに起きた少女達だが、数人の少女は昼夜の逆転した事に美容の天敵だと少し微妙な表情をする。

しかしハルナは徹夜の一日や二日など余裕だと言い、いつもと同じく元気だった。


「っていうかいつ帰るの? 夜にまた寝て朝に帰る?」

「それがいいですわね。 下手な時間に帰ると時差ぼけになりますわ。」

タマモはよほど楽しかったのか、バンドコンテストが終わったにも関わらず先程からギターを弾いて練習している。

ちなみにバンドコンテストでは横島と少女達のでこぴんロケットは、話題賞という賞を貰っている。

技量とか完成度ではなく、タマモが参加したことで話題になったからであろう。


「あと一日で麻帆良祭も終わりね。」

「去年より睡眠時間が取れた分だけ、今年は楽しめたわね。」

麻帆良祭も去年や一昨年だと最終日辺りは眠気と戦いながらの祭りとなり、それはそれで楽しくいいものだった。

ただきちんと睡眠を取るとその分より精力的に楽しめたのも事実であり、麻帆良祭があと一日となり少し名残惜しそうである。


「AIが進化してるなぁ。」

「当然です! 成長無き者に生きる資格はないのです!」

「みんなと一緒にご飯が食べたいです。」

横島はといえば、先程から初音と鈴江のメンテナンスを暇潰しにやっていたが、予想より早いAIの進化に少し首を傾げていた。

高度に完成されたAIは人と変わらぬ可能性と成長をする。

まして二人にはロボット三原則なんて入れてないのだ。

自己防衛は当然あるが、人間への服従や人間に危害を加えないという二つは横島が入れる気もなかった。

自分で考えられるAIがあるのにそんなもの入れる必要がないと言えばそうだが、見ず知らずの人間よりは初音と鈴江の方が大切なのは当然だった。

尤もテレビとかに影響されやすくタマモと一緒に散歩をすることもあるので、タマモが自分はお姉さんだからとあれこれと教えてるらしく、少しいびつな成長をしているのは悩みといえば悩みだが。


「まあ、いいか。」

今のところ魂を持つ気配すらないが、高度に完成されたAIは生命体と変わらぬ成長をして共に生きている。

自らの力で人生を切り開く二人の成長を、横島は止める気はなかった。

ハニワ兵やタマモもそうだが基本は放任主義らしい。

横島自身は特に意識してる訳ではないが、かつて令子が横島にしていた事と似ていた。

意外に似た者同士だと横島本人に言えば否定するかもしれないが。

80/100ページ
スキ