二年目の春・9

時間は深夜を超えて朝方になっていた。

ほぼ徹夜になったがシャワーや着替えもしたいとのことでパーティーはお開きになり、横島は途中で寝落ちしたタマモをおんぶして朝方の街を歩いていた。

日中は暑いくらいの気温になるが、夜と朝方はまだまだ冷えて寒い。

東の空が明るみ出していて、徹夜で騒いでいた麻帆良の人々も僅かな小休止となるのがこの時間だ。


「ふぁ~。 流石に眠いね。」

「他のみんなは途中で眠すぎて、テンションおかしかったわよ」

横島と少女達は異空間アジトで休憩を挟んで参加してるので余裕があるが、他のクラスメートなどはそれがないので数日前から徹夜やそれに近い強行日程を過ごしているので眠気でおかしくなっていた者もいた。

朝倉和美がビデオカメラを回していたので、後で見たら面白いことになるだろうが。


「マスター。 一緒に温泉入りにいこ♪」

「そういう誤解を招くような発言は止めろって。 」

ただ横島と少女達はやはり休憩を挟んでいるからか多少眠気はあるようだがまだ元気で、桜子は横島を温泉に誘う。

今は周りには秘密を知らぬ者が居ないとはいえ、流石に街中でそんな事を言われると横島は動揺してしまう。


「水着着てなら、まあいいが。」

「着なくてもいいよ!」

「良くないわ!」

異空間アジトに行くようになり、海や別荘のプールに露天風呂と水着になる機会が増えた現状では水着くらいなら流石に騒がなくなったが。

桜子だけは別に水着を着なくてもいいと平気で口にするし、本当に水着を着ないで混浴した前科があるので笑えなかった。

幸か不幸か、身体は同年代と比較して育ってるので尚更洒落にならない。


「来年は高校生だぞ? もっと恥じらいを持たんとあかんやろ。」

「マスターならいいじゃん。」

「いや、良くないと思うぞ。」

横島は何度目か分からぬほど注意した事を再び口にするが、桜子は聞いてはいるが聞き流す感じで相変わらずだった。

一方周りで聞いている他の少女達は、桜子が一歩進んでるようで少し気にしていた。

友達以上家族未満の関係に近い横島と少女達だが、桜子だけは混浴したりと進んでる感じがある。

同じ立場なのであまり牽制とかしてないこともあるが、このまま桜子だけ特別になるのは面白くないのが本音だろう。

まあ円・ハルナ・夏美・亜子なんかは横島に男性として好意がないので別だが。

実のところ麻帆良祭では、にわかカップルが出来ることも多い時期でもある。

クリスマスやバレンタインに並ぶイベントなので、羽目を外し過ぎて一気に初体験まで行ったなんて話も少なくない。

別に今の関係は悪くはない。

でももう少しドキドキするような思い出が欲しいと、思わなくもないのが少女達の微妙な乙女心だった。


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