二年目の春・9

ステージ上では学生達によるライブが次々と行われていた。

横島達の出番が近くなるとステージ裏で待機して他のグループのライブを見ているが、タマモは楽しそうに見知らぬ曲に合わせて体を動かしている。


「おい、あれ!?」

「子供じゃん!」

そしていよいよ出番になるとステージに楽曲を準備して演奏の準備を始めるが、幼いタマモが現れて特注のギターをアンプに繋ぐと会場からどよめきが起こった。


「せーの、タマちゃん頑張って!」

「マスター。 トチったらだめよー」

ただ、それだけではない。

初登場のグループにも関わらず、店の常連客の人達が会場には来ていて応援してくれていた。

麻帆良でも有名なバンドなどはファンが居たりして活動している人達も居るが、素人にしては周りが驚くほど横島達に応援の声があがる。


「タマちゃん大丈夫やろか」

「美砂達の方がやばそうじゃない? 緊張してるみたいよ。」

そして木乃香達など横島とタマモに身近な少女達も会場には来ていて、声援に嬉しそうに手を振るタマモを少しハラハラしながら見ていた。

特に木乃香は自身の料理大会の時と違い応援に回ったせいか、人一倍心配なようである。


「次はでこぴんロケットです! メンバーのタマモちゃんは歴代最年少出場者になります!」

司会の学生に紹介されると、会場からは歓声があがり本番となる。

緊張と期待から少し表情が固い少女達をリードしたのは、やはり横島だった。

恥をかくのは慣れているし、大舞台も何度も経験済みだ。

まあ横島もこれほど注目を集めるのは久々なので、少し懐かしいような適度な緊張は感じていたが。

かつては感情と本能と勢いで修羅場に突入していた。

それが落ち着いて周りを気にするようになった事に、時の流れを感じずには居られなかったが。


横島は美砂達を気遣いつつ演奏を始める。

元々バンドを組みライブをしたかったのは彼女達であり、そんな横島にどこか安堵したのか美砂達もまた練習通りに楽器を演奏して歌を歌う。

一番楽しそうなのはやはりタマモであるが。

異空間アジトでも練習したので練習はバッチリであり、一旦始まると横島も美砂達も楽しんでライブを出来ていた。

タマモの見せ場は歌の間奏に演奏するギターのソロパートだ。

流石に本格的な演奏はしないだろうと考えていた観客達の度胆を抜くことになる。


「タマちゃん凄いですね。」

そしてそれは木乃香達も同じであり、木乃香や明日菜は元より人前に出たりして目立つのが苦手なのどかなんかは特に凄いと驚き応援していた。

持ち時間は多くはないが、でこぴんロケットは数ある出場者の中でも個性的なライブで観客を沸かせることになった。


74/100ページ
スキ