二年目の春・9

その後は夕方まで働いた横島達であるが、交代すると横島宅に戻りライブ参加の為に楽器を持ち世界樹前広場に行く。

そこの特設ステージにてライブに参加することになっている。


「タマちゃん、あそこで楽器を演奏するのよ!」

「大丈夫?」

「うん! がんばる!」

衣装は横島宅のハニワ兵が手作りした一点物であり、他の出演者に負けてない。

ちなみにバンド名は史実と同じく、でこぴんロケットになっている。

候補は他にもあり悩んだが、最終的に同じになったらしい。


「タマちゃんが一番緊張しなさそうよね。」

「注目されるの慣れてるものね。」

流石の美砂も会場に到着すると少し緊張気味であるが、タマモは楽しみにワクワクした様子で瞳を輝かせて他の出演者達をキョロキョロと見ている。

当然横島に関してもあまり緊張してない。

良くも悪くもいろいろな経験だけはしてるので、このくらいだとほとんど緊張しないようだ。


「明日から俺もスターだな!」

「どうせモテても手を出さない癖に。」

「手を出したらクズになるだろうが。 だがモテるだけなら問題ないからな!」

相変わらず横島はあわよくばモテたいと考えていて、美砂と円を呆れさせる。

実際麻帆良での横島は結構モテるが、手を出した形跡は今のところはない。

正直美砂達からすると、モテてちやほやされたいだけの子供のように見えてしまう。

変なとこにコンプレックスがあるし、いろいろ屈折してるなとしみじみと感じる。

まあここで横島が手当たり次第に女に手を出す男ならば、少なくとも美砂達はここまで横島と一緒に居ることはなかっただろうが。


「タマちゃん最年少みたいだね。」

「そりゃそうでしょう。」

「マスターよりタマちゃん人気出そう。」

そのまま自分達の順番待ちをするが、控え室は仮設のテントで他の出演者も居て、みんな最後の音合わせなどをしているがやはりタマモが目立っている。

いつの間にか知らない大学生のバンドの人達と仲良くなり、タマモは練習したギターを披露して驚かれている。


「タマモはなぁ。」

相変わらず傾国の幼女とでもアダ名が付きそうなタマモに、美砂達と横島は揃って苦笑いを浮かべた。

幼子特有の純心無垢でありながら、何処か人を惹き付ける魅力があるタマモには横島も美砂達も勝てなかった。


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