二年目の春・9

「知らない人達にカメラを向けられたら、気を付けないとダメだよ」

「はーい!」

結局マスコミは文句を口にしつつ帰り、雪広グループの広報担当社員はほっと一息ついていた。

同時にあまりに人に無警戒に見えるタマモに気を付けるように言い、タマモも素直に返事するがどこまで理解してるのかと悩む事になる。

まあお祭りだし先程の連中ほど悪質な者はそうそう何度も来ないだろうと考え、タマモが働く間は少女達と大人で気をつけてやるしかなかった。

実際学生にも携帯やスマホのカメラで写真を撮られてるタマモに、マスコミを見分けろというのは難しい。


「いらっしゃいませ!」

その後もタマモは精力的に働き多くのお客さんに声を掛けていくことになる。


「誰に似たんだろうなぁ。」

一方厨房では横島と少女達が、悪質なマスコミに無警戒なタマモに頭を悩ませていた。

命の危険や明確な悪意があればタマモも本能的に避けるのだろうが、悪意がない悪意には今一つ無警戒だった。

横島の知るもう一人のタマモは、あそこまで社交的でも無警戒でもなかっただけに悩むらしい。


「マスターじゃない?」

「うん。 さよちゃんにも似てる気もするけど」

「私ですか?」

ついタマモは誰の影響であれほど社交的になったんだろうと横島が口にすると、少女達は横島とさよの影響だろうと答える。

麻帆良といえど社交的でない人は居るし、子供にも個性はある。

しかしまあ保護者や家族の影響が大きいのは言うまでもなく、封印から解き放たれてすぐに不特定多数の人が集まる店に居た影響が大きいのは言うまでもない。

実際には木乃香や明日菜などの身近な少女の影響も強く、社交的で天真爛漫なところは彼女達の影響も大きいだろうが。


「っていうか本当の両親の影響もあるんじゃないの?」

ちなみにこの場にはタマモの秘密を知らない少女も居るので、迂闊なことは言えなかったりする。

タマモは対外的には横島が預かってる訳ありな子供になっているのだ。

実際タマモは金毛白面九尾の転生体であり、両親が居るとしても悠久の時の彼方に亡くなってるので分からないのだが。


「でも最初は大人しい子だったわよね?」

「うん。大人しかった!」

「へぇ。 そうなんだ。」

正直タマモも最初は大人しく、人を避けるような感じが少しあったことを知る者は多くない。

木乃香や夕映とのどかなんかが割りと早く仲良くなったし、店の常連の人達もタマモを温かく見守ってくれたおかげだろう。

当初一番タマモとの関係に戸惑っていた明日菜ですら、いつの間にか仲良くなっていて現在ではそれが当たり前になっているのだから、時の流れは早いなと少女達は感じる。


「わーい! ありがとう!」

一方タマモは働きながらお客さんから割引券や無料券を貰うこともあり、また何かの割引券か無料券を貰ったらしい。


「いべんとのむりょうけんもらったよ!」

「ちゃんとお礼出来た?」

「うん!」

タマモが貰ったのは何かのイベントの無料参加券らしく、厨房に報告に来ると少女達は微笑ましい姿に笑みを浮かべる。

あまりにあれこれと貰いすぎて、全部回れないので困るという問題もあるのだが。



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