二年目の春・9

大会参加者の料理は様々だった。

鶏の丸焼きを作る者も居れば、ラーメンを作る者も居た。

子供からお年寄りまで幅広く好まれる味もあれば、激辛のように子供や苦手な人が居る料理もある。


「美味しいけど辛いですね。」

「タマちゃん、大丈夫?」

「ちょっとむり。 ごめんなさい。」

順調に審査は進むが、問題が起きたのは激辛料理だった。

元々妖怪故に嗅覚や味覚が鋭いタマモは、頑張って一口食べたが水をがぶ飲みして隣の木乃香に抱きついてしまった。

無論のこと味は美味しいのだ。

ただ子供向きではない。

基本的に料理は残さず食べるタマモも、流石に激辛料理は無理らしい。

日頃から作り手の側の視点に立ち、自らも庭の畑で野菜を育ててるタマモは食べ物を残すなんてことはしないのだ。

まあ木乃香達のしつけの影響もあるが。

食べられない物を無理に食べろとは言わないが、残さず食べるのが一番いいとはしつけられていた。


「悪くないけどなぁ。 もう少し辛さに負けない旨味が欲しかったかな。」

「やり過ぎネ。 辛さに味が負けてるヨ。 一口料理なら面白いけどネ。」

激辛料理の点数はあまり高くはなかった。

個性的でインパクトがあるのはプラスだし、暑い夏を激辛料理で乗り切るという発想も悪くない。

ただし納涼祭というお祭りで、水を必要以上に飲みたくなる料理は賛否が分かれた。

それと辛さと旨味や味のバランスが必ずしもいいとは言えず、横島と超鈴音の評価が低かったのもある。

一口目のインパクトと味は悪くないが、一皿食べきるのはヨほどの猛者でないと無理だとの判断だ。

調理者は少し納得がいかない様子だし、激辛料理にも一定のファンがついているのも確かだろう。

正直納涼祭の屋台に一台くらいは、こんな料理があってもいいとは思う。

ただし大会優勝者をこの料理にするのは、レベルが足りてないのが現実だった。

はっきり言えば審査員に、中学生とタマモが居るこの大会に向く料理ではない。


「えーと、最後に何かアドバイスをお願いします。」

「これはこれでいいけど、もう一品マイルドな辛さの奴も作るべきだったと思う。 自分の味に拘るのはいいけど、食べる人の好みをもう少し意識したら良くなると思うな。」

そして一品ごとにアドバイスを求められている横島は困った様子になり、考えながらアドバイスをおくる。

調理者は激辛料理に拘りがあるようだし、そこは否定しないが。

少し厳しい言い方をすれば、食べる側の気持ちになってないように見えて仕方ない。

横島自身も自分の好きな料理を作るタイプなので否定はしないが、常連には好みに合わせて味を少し変えたりもしている。

その辺りのさじ加減を上手くやらないと、調理者の成長は無いだろうなと思うらしい。

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