二年目の春・9

「あの人。 変わったな」

「えーと、それはどういう意味でしょう?」

「去年の体育祭は勝つことだけに集中してたように見えたが、今回は目的が違うように見える。」

観客もそれなりに居る。

解説は特に用意してなかったので横島が頼まれてしていたが、体育祭で木乃香が戦った男の変化に横島は気付いていた。


「目的ですか。」

「何を考えて料理を作るか。 それにより味は微妙に変わるからな。」

横島自身、麻帆良では知名度もあり料理人として評価が高い。

その言葉は大会参加者や観客の人々の注目を集め、パティシエの男は一気に注目を集める。


「あの人も凄いな。 魅せる技がある。」

一方他の参加者も負けてない。

ある者は焼きそばを焼く際にヘラを空中に投げてキャッチするなどのパフォーマンスをしながら焼いているし、またある者はシンプルな焼き鳥を焼いていたがタレが自家製の物だったりと趣向を凝らしている。

タマモなんかはパフォーマンスをしてる者にパチパチと拍手して喜んでいたし、単純な技量はパティシエの男が上のようだが、納涼祭の屋台として見るならば結果は分からなかった。


「それでは一番手の方! 試食です」

試食は完成次第行われて早さもポイントであるが、最初はいきなり高得点は出にくいと思われるので様子見の人が多い。

そんな中で一番手に完成させて試食をすることになったのは、女子大生の女の人だった。

趣味が料理だったようだが、プロになれる自信もなく小さな大会故に腕試しにちょうどいいと参加したらしい。


「フルーツパンケーキです。 そのままお召し上がりください」

彼女の料理はドライフルーツをパンケーキの生地に混ぜて、焼いた物だった。

小さめの丸いパンケーキを二つ折りにして、ホイップクリームを挟んだ物になる。


「美味しいネ。 クレープよりも食べごたえがあるし、悪くないヨ」

「ホンマや。」

「甘さ控え目だな。ボリュームもちょうどいい」

「おいしい!」

それほど斬新でも高度なテクニックがある訳でもないが、彼女のパンケーキの評価は高かった。

観客にも一口サイズで配られ味見をしていくが、お祭りにはちょうどいいと評判だ。


「えーと、何かアドバイス等あればお願いします」

「えっ!? アドバイス? うーん。 十分美味いぞ。 強いて挙げるとすれば食感を足すことを考えてみるべきかもな。 でもこれはこのままでいいと思う。」

最後に横島はアドバイスを求められると困惑するが、何か少し食感に変化を与えれば変わると自身の考えを口にするも。

正直にこれはこのままでいいとも言う。

幾つかのアイデアはあるが、それほど問題がある訳でもなくプラスアルファで面白いというレベルだった。

一人目から少なくとも納涼祭の屋台としては合格点を与えることになる。




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