二年目の春・9

この日は特に出掛ける予定はない。

横島とタマモは美砂達と麻帆良祭二日目に行われるバンド大会の為の最終練習をしていて、他の少女達や刀子も特に何かする予定はないようだ。

まあ庭のプールで泳ぐくらいはしているが。


「まあ、こんなもんかな。」

横島に関しては練習してないが出来ていて、あとは美砂達と合わせるだけだが問題はないらしい。

美砂達にしても異空間アジトで練習もしたので、一応恥をかかない程度には形になっている。


「みんなのまえでやるんだよね!? たのしみ!」

「そうよ。 一気にスターになっちゃったらどうする?」

「すたー?」

「タマちゃんの場合、今とあんまり変わらなそう。 すでに人気者じゃん」

ただタマモに関しては今一つ理解しきれてない部分もあるようで、パーティーなんかと似たような感覚らしい。

美砂や桜子は一躍スターになるなどと冗談を口にするが、円はタマモの日常は変わらないのではと笑っていた。

街を歩けばいろんな人に声を掛けられ、最近では一緒に写真を撮ることすらあるのでご近所の人気者ではあるのだ。


「まき絵さん。 新体操の練習をするなら着替えなさい。 下着が見えてるわよ。 タマちゃんの教育に良くないわ。」

「あれ? そう? じゃあ着替えてくるね!」

一方庭ではまき絵が麻帆良祭期間中に披露している新体操のエキジビションの練習をしていたが、短めのスカート姿でやるもんだからパンツが見えている。

少女達は割と慣れた光景に気にしてなかったが、刀子はタマモへの悪影響を心配して注意していた。

まだまだ子供なのだと刀子は思い、ふと笑い出してしまう。

実際まき絵は同年代と比較しても、ちょっと幼さが残る感じではあるのだが。


「ねえねえ、私のジャージ知らない?」

「どわっ!? 下着姿でウロウロしたらあかんやろ!」

「あっ、マスター。 どう? おニューの下着なんだ!」

ただ刀子の心配は早くも現実のものとなり、まき絵は着替えようとしていた学校のジャージがないらしく下着姿のままリビングに探しに来てしまっていた。

しかも横島に見つかると騒ぐ横島に下着の良し悪しを聞く辺り、根本的に刀子の言いたいことをまるで理解してない事を刀子や周囲の少女達は悟る。


「最近の子って、分からないわ。」

「まき絵さんは別ですよ。」

「でも一応、誰彼構わずって訳じゃないんやけど……」

刀子は年齢のギャップを改めて感じてしまうが、少女達はそこで一緒にされても困ると複雑そうだ。

まき絵の親友の亜子に言わせると、まき絵も誰彼構わず警戒心や恥じらいがない訳ではなく、男性では家族か横島くらいのようなのだが。

自他共に認めるおバカなまき絵は、ある意味自分の気持ちに素直なだけである。

恋愛感覚がまだ子供なだけとも言えるが。

ちなみに横島は元々面倒見がいいタイプなので、まき絵のそんな様子に真面目に心配していたが。

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