二年目の春・9

「住む世界が違うって、シミジミと感じるなぁ。」

「普通に生きてれば結婚式くらいですからね。 パーティーと言えば。」

パーティー会場には支援企業の関係者が集まり、それぞれに親しい人と談笑している。

挨拶回りをしてる人も居るが、大多数は比較的リラックスした様子でパーティーが始まるのを待っていた。

そもそもパーティーの主催者である学園側のトップである近右衛門も、支援企業側のトップである雪広家や那波家もあやか以外はまだ姿を見せてない。

パーティーはビュッフェスタイルのようで早くも料理が並んでいる。

流石にパーティーが始まる前から食べてる人は居ないが。

横島と夕映はなんとなく落ち着かないようであったが、近右衛門達が姿を表すとようやくパーティーは始まる。

まず学園全体の生徒会会長から支援へのお礼の挨拶などがあり、学園関係者や近右衛門の挨拶がある。

支援企業の代表はあやかの父である雪広政樹だった。

まあこの辺りはお決まりの挨拶であり、横島は適当に聞き流して乾杯を待っている。


「では、乾杯。」

最後に近右衛門が乾杯の音頭を取ると、ようやくパーティーが本格的に始まった。


「どうも。 ご無沙汰してます。」

ちなみに新参者の横島は支援企業の関係者に挨拶回りをしなくてはならない。

あまり長々と堅苦しい挨拶をする訳ではないが、顔見せ程度の挨拶は必要である。


「横島君と綾瀬君か。 二人も元気そうだね。 麻帆良カレー大人気じゃないか。」

「ありがとうございます。 まさか一年後の麻帆良祭でもあのカレーがあるとは思いませんでしたよ。」

実際昨年のクリスマスパーティーで初対面の挨拶はしてるし、納涼祭のスポンサーとは今年になってからも会ってる。

全くの初対面でないだけ横島も夕映も気が楽だった。

尤も夕映は麻帆良の財界に完全に顔を覚えられてる状況に、何か違うと違和感を覚えていたが。


「あれ、明石教授と高杉教授じゃないっすか!?」

「やあ。 僕達も支援の返礼にね。」

ただ見知った人物も中にはいた。

明石裕奈の父親と、麻帆良の符術士として裏では有名な変人教授の高杉の姿がある。

ただし真面目に挨拶回りをする明石教授と、助手らしき女性に監視されながらやらされてる感のある高杉教授と違いは歴然だったが。


「全く、ワシは論文で忙しいのじゃぞ!」

「はいはい。 パーティーが終われば好きなだけ論文を書いて頂きますから。」

「今じゃなきゃ書けんのじゃ!」

高杉教授は一言で言えば駄々っ子だった。

まあ学園関係者も支援企業の関係者も慣れたもので、誰も気にしてないが。

この姿を見ると大丈夫なのかと不安になるが、学生からは親身になってくれると評判はいい。


「せっかく来たんだ。 俺達も食うか。」

流石に横島も高杉のようにはなるまいと、人の振りみて自己反省していたが。

一通り挨拶回りを終えると夕映とあやかと共に、夕食にすることになる。

芦優太郎の方は仕事の関係者と話があるらしく先程分かれたが、あやかは麻帆良カレーや納涼祭の関係から横島と夕映と共に居たのだ。



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