二年目の春・9

時刻は夕方に差し掛かっていた。

途中で合流したハルナに美砂達にまき絵と亜子と千鶴も集まっている。

あやかは麻帆良カレーや納涼祭の方で忙しく、夏美は演劇部の舞台で夜の講演があるようで来てない。

あと刹那は頼まれて魔法協会の手伝いをしてるらしい。


「横島さんはもう少ししたら、パーティーに出る準備に戻らないと。」

「えー! パーティーいいなー!」

「なら代わりに行くか? 挨拶回りだから面倒だぞ。」

夕食とこのあとどうしようかと話す一同だが、横島は麻帆良学園の支援企業のパーティーに出席するので、夜は一緒に回れないのだ。

まき絵はパーティーを羨ましげにするし、タマモも少し残念そうにするが、仕事と言われれば仕方ない。

横島は芦コーポレーションのオーナーになってはいるが、実際なにもしてないので土偶羅の分体である芦優太郎だけでいいのではとも思うが、近右衛門や雪広清十郎達に頼まれた以上は行かなければならなかった。


「ウチはパレード見よか」

「うん!」

同行者は夕映一人で、他はみんなで夜のパレードを見物することになる。

ちなみに夕映も別に率先して行く訳ではなく、横島を一人にしたら不安だという近右衛門達に頼まれての出席になる。

一応支援企業のパーティーには麻帆良カレーの関係者も参加する事になっているので、夕映とのどかは出席する事が可能なのだ。

のどかは丁重にお断りしていたが。


「分身でそっち行くか。」

「駄目ですよ。 お願いですから普通に出てください。」

正直、横島は気乗りしない。

分身の術で作った分身でパーティーに出ようかなんて言い出すが、どう考えても騒動の種にしかならないのは明らかで夕映に止められてしまう。

どうも斉天大聖から習った事があるようで、分身の術も一応使えるらしいのだが。


「夕映ちゃんだけズルい!」

「私も出来れば遠慮したいのですよ。 お偉いさんの居るパーティーなんて。」

なお、まき絵はやはりパーティーの意味を理解してないようで、パーティーと言えば楽しくてご馳走が食べれるとの理論から離れられないようである。

横島と夕映からすると、そんなに楽しいものじゃないのにと苦笑いしか出ないが。


「案外、娘を紹介しようとかって、美人を紹介されたりして……」

「美人か?」

「夕映ちゃん。お願いね。」

「えーと、善処します。」

正直、千鶴以外は企業が集まるパーティーなんてどんな物か知らなく、美砂がもしかしたら美人を紹介されるかもと横島に囁くと満更でもない反応になる。

周りの女性陣の表情が少しぴくりと動いたところで、夕映は横島のお守りを頼まれてしまい困ったようにため息をこぼした。

そんな企業のパーティーで出会いなんて、ないだろうと思うが。

横島ならば何をやらかしても不思議じゃないところもある。

結局夕映は横島と共にパーティー出席の準備の為に一旦横島の家に戻ることになる。

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