二年目の春・9

「すごかった!」

「ここは麻帆良祭じゃなくても土日もやってるわ。またいつでも来れるわ」

三十分ほどのプラネタリウムが終わると、タマモは興奮気味に千鶴にプラネタリウムの楽しさを報告した。

日頃から星を見るタマモだが、あいにくと星座として見たり、星座の話などを聞いたことはない。

天文部員が分りやすく解説する、星座の話なんかも好評なようである。

大好きな星を見てご機嫌なタマモは、明日菜と木乃香と手を繋ぎながら歩き、次は何処に行こうかと話をしていく。

賑やかな町と見たこともない出し物やイベントの数々に、人々の笑顔。

どれを取ってもタマモは好きであり、何処に行こうかということ迷いは尽きない。


「あー。 わたししってる! きょねんいっしょにやったよ!」

そして次に一行が訪れたのは、チアーリーディング部のエキシビションである。

タマモは去年の体育祭で、美砂達と一緒に応援した物だと少し勘違いしてるが。


「みんな美人だなぁ。」

一方の横島はちょっぴり鼻の下を伸ばしてしまい、木乃香達に少し不満げな表情をされる。

すらりと伸びた手足に、短いスカートをしたチアーリーディングの衣装に反応したらしい。

他の積極的な美砂や桜子が居れば、ここで横島に抱き付くなりアピールするところだが、あいにくと木乃香達はそこまでは出来なかった。

まあ、横島自身も昔に比べると理性的だが。


「あっ、タマちゃんだ!」

「ヤッポー。 一緒にやる?」

「うん!」

一般的な応援と違い、見せる演技であるチアーリーディングにタマモは驚き拍手をして見物していたが、一通り終わるとアンコールのような形で、観客の小さな子供達と一緒にやることになる。

無論タマモも誘われると、チャチャゼロの入ったリュックを背負ったまま参加する。

小さな子供達は本当に見よう見まねのお遊戯といった感じだが、周りが上手く合わせることで一緒にチアーリーディングをやってるような気分になり楽しいようだ。

タマモもまた見知らぬ子供達と一緒に、見よう見まねの動きで踊り楽しんでいた。

ちなみにタマモの服装は店の時のままの、狐の着ぐるみ風のコスプレをして、チャチャゼロの頭が出てるリュックを背負っていたので目立っていたが。


「楽しかった?」

「うん!」

「よかったな~。」

運動したら小腹が空いたのか、一行はそのまま再び女子中等部の校舎に戻り、メイド喫茶をやってるクラスへと来ていた。

なぜか初音と鈴江は初めてのメイド喫茶に興味深々で、メイド姿の少女達は不思議そうな表情をする。

まあ興味深々なのはタマモも同じで、横島の店との違いをキョロキョロと見渡していた。


「きっさてんって、うちのおみせとおなじ?」

「そうですね。ここはメイドさんが居ますので、ちょっと違いますが」

「うんうん。いろんなきっさてんがあるんだね!」

まさかメイド喫茶をやりたいなんて言い出すのではと、夕映は少し冷や汗を流しながら説明するが、タマモとしては自分達の店と同じ喫茶店をライバルだと見てるのかもしれない。

負けてられないと密かに闘志を燃やすタマモだが、タマモ自身はメイドさんになってみたいものの、店をメイド喫茶にしたいとは思わないようだ。

みんなで楽しい今のマホラカフェがタマモは好きだった。



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