二年目の春・9

「ぷらねたりうむ?」

次に一行が向かったのは、千鶴の所属する天文部のプラネタリウムだった。


「お星様を見るんや。」

「わたしすき! ……でも、おほしさまはよるにみるんだよね?」

昨年には十五夜には天文部のお月見イベントに参加したし、日頃からさよとハニワ兵と一緒に屋上で夜空を見ることのあるタマモは、星を見るのが大好きだった。

しかしタマモ自身はプラネタリウムを知らなく、真っ昼間から星を見に行こうと語る木乃香に空を見上げてキョトンとしている。


「今から行くところは、お昼でもお星様が見れるのですよ。」

「すごい!」

流石にタマモも昼に星が見えないのは理解している。

まるで魔法でも見るかのように、瞳を輝かせるタマモと共に一行はプラネタリウムの施設に向かう。


「プラネタリウムって言えば、去年は大変だったわね。」

「ああ、そんなこともあったな。」

ただちょうど一行が歩いてるところが、去年に横島と千鶴のストーカーが対峙した場所に差し掛かると、明日菜はふと少し苦笑いを見せながら感慨深げな表情を見せる。

事情を知らぬタマモと初音と鈴江が興味を示したので、夕映とのどかが語って聞かせるが、横島は少し恥ずかしそうにしていた。

若干大人げないというか、もう少しやり方があったのではと今になれば思うらしい。

少なくとも千鶴に恥をかかせるようなやり方は、不味かったなと反省している。


「横島さんは考えてるようで、考えてませんからね。」

「そうだね。」

夕映とのどかは今になってみれば笑い話として語れるが、ある意味横島の本質がそのまま表れた一件だと思う。

決して頭は悪くなく深く考える事もできるが、本質的にそこまで深く熟慮して生きてる人ではないと、はっきりした件に感じる。

横島自身、割と巻き込まれ体質というか、騒動に絡みやすいのはそんな本質のせいに思えるのだろう。


「ちずるちゃんだ! おほしさまみにきたよ!」

そんな話をしてるうちにプラネタリウムの施設に到着する。

千鶴の姿を見て嬉しそうであり好奇心に瞳を輝かせて駆け寄るタマモを、千鶴は暖かく迎える。


「うふふ。 いらっしゃい」

「ほんとうに、おほしさまみれるの?」

「ええ。 本物のお星様じゃないけど、本物みたいに綺麗よ。」

「うわぁ。 たのしみ!」

プラネタリウムはちょうど人の入れ替え時間のようで、入り口付近は混雑している。

一行は千鶴に案内されて会場に入ると、丸い天井と天井を見上げるように設置された椅子に座る。

タマモはチャチャゼロの入ったリュックを膝に乗せて、以前に異空間アジトで見た映画館を思い出してキョロキョロと辺りを見渡していた。


「うわぁ……、おほしさまだ……」

そしてプラネタリウムが始まると、タマモはまるで魔法でも見たかのように驚き、目を見開いた。

立体影像など見慣れてると言っても過言ではないタマモであるが、まさか昼から星空が見れるとは思わなかったらしい。

もしかすれば遥か彼方にある失われた過去の記憶を、無意識に重ねているのかもしれない。

悠久の時を重ねても変わらぬ星空が、タマモは本当に好きだった。

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