二年目の春・9
「現在四十分待ちです~。 椅子が必要な方は申し出て下さい」
「はい! いすだよ!」
一方仮設店舗の方は、前日まで以上の大にぎわいだった。
タマモが居ることもあって始めた、去年はやらなかった行列の案内と整理は大活躍であり、タマモも椅子を持って積極的にお客さんに手渡している。
麻帆良祭でも注目される出し物やイベントでは行列が付き物であり、いかに行列をうまく捌き不満を感じさせないかも意外と重要だったりする。
「この絵本、可愛いわね。」
「初めて見たわ。」
「絵本はオリジナルなので、ここだけでの限定販売なんですよ。」
「あら、そうなの? 凄いわね。」
そんなこの日、開店直後から予想以上に注目を集めていたのは、ハルナが半ば独断で作った絵本だった。
いわゆる店の宣伝用のパンフレットや絵本ではなく、見た目は普通の絵本そのものであり、内容が仮設店舗とリンクするのだ。
「あら、この子って。」
「ああ、行列の整理してた子ね。」
「なるほど。 あの子の原案なのね。」
絵本のラストのページには原作・原案にタマモの名前と写真があり、作画にハルナの名前と写真がある。
あまり宣伝はしてないが、絵本を見ると絵本の世界から飛び出して来たような出し物になっているのだ。
麻帆良祭の期間中のみの販売予定なことと、限定という言葉に弱い日本人の性質もあり、絵本は麻帆良市外から来た一般客に次々と売れていくことになる。
「なんか内装とかと料理がちぐはぐに見えたけど、絵本を見ると自然に見えるわね。」
「本当ね。 面白いわ。」
ちなみに絵本には森のレストランの料理人である動物さんが、こっそり人間社会に紛れて料理を学ぶ姿が少し描かれていて、今一つ統一感のなかった店をそれなりに一体化させる役割も担っていた。
余談になるが、ハルナは絵本にちょいちょい詳しく気になるような描写を入れていて、絵本が好評なら続編を期待するような仕上がりになっている。
伊達に同人誌作りに励んでいた訳ではなく、話の構成は普通に上手かった。
「ねえ、これにあの子のサイン貰えるかしら?」
「サインですか? えーと、特にそんな有名な訳じゃないですよ?」
「いいわよ。 記念だから。」
「はい。 なら大丈夫だと。 でも子供ですから格好いいサインにならないかも。」
「それがいいのよ。」
その後、何がどう間違ったのか。
一人の女性がタマモのサインを欲しがると、買ってくれたのに断るのも悪いからと絵本の購入者には要望があればタマモがサインすることになる。
ちなみにタマモは当然ながらサインなんて知らなく、これまたハルナがタマモに説明して、崩し気味のカタカナに猫や狐の絵を一体簡単に書いたサインが完成する。
幼児特有の字をなんとなくサインにした物だが、適度に崩れた字と味のある可愛い絵は好評だった。
「はい! いすだよ!」
一方仮設店舗の方は、前日まで以上の大にぎわいだった。
タマモが居ることもあって始めた、去年はやらなかった行列の案内と整理は大活躍であり、タマモも椅子を持って積極的にお客さんに手渡している。
麻帆良祭でも注目される出し物やイベントでは行列が付き物であり、いかに行列をうまく捌き不満を感じさせないかも意外と重要だったりする。
「この絵本、可愛いわね。」
「初めて見たわ。」
「絵本はオリジナルなので、ここだけでの限定販売なんですよ。」
「あら、そうなの? 凄いわね。」
そんなこの日、開店直後から予想以上に注目を集めていたのは、ハルナが半ば独断で作った絵本だった。
いわゆる店の宣伝用のパンフレットや絵本ではなく、見た目は普通の絵本そのものであり、内容が仮設店舗とリンクするのだ。
「あら、この子って。」
「ああ、行列の整理してた子ね。」
「なるほど。 あの子の原案なのね。」
絵本のラストのページには原作・原案にタマモの名前と写真があり、作画にハルナの名前と写真がある。
あまり宣伝はしてないが、絵本を見ると絵本の世界から飛び出して来たような出し物になっているのだ。
麻帆良祭の期間中のみの販売予定なことと、限定という言葉に弱い日本人の性質もあり、絵本は麻帆良市外から来た一般客に次々と売れていくことになる。
「なんか内装とかと料理がちぐはぐに見えたけど、絵本を見ると自然に見えるわね。」
「本当ね。 面白いわ。」
ちなみに絵本には森のレストランの料理人である動物さんが、こっそり人間社会に紛れて料理を学ぶ姿が少し描かれていて、今一つ統一感のなかった店をそれなりに一体化させる役割も担っていた。
余談になるが、ハルナは絵本にちょいちょい詳しく気になるような描写を入れていて、絵本が好評なら続編を期待するような仕上がりになっている。
伊達に同人誌作りに励んでいた訳ではなく、話の構成は普通に上手かった。
「ねえ、これにあの子のサイン貰えるかしら?」
「サインですか? えーと、特にそんな有名な訳じゃないですよ?」
「いいわよ。 記念だから。」
「はい。 なら大丈夫だと。 でも子供ですから格好いいサインにならないかも。」
「それがいいのよ。」
その後、何がどう間違ったのか。
一人の女性がタマモのサインを欲しがると、買ってくれたのに断るのも悪いからと絵本の購入者には要望があればタマモがサインすることになる。
ちなみにタマモは当然ながらサインなんて知らなく、これまたハルナがタマモに説明して、崩し気味のカタカナに猫や狐の絵を一体簡単に書いたサインが完成する。
幼児特有の字をなんとなくサインにした物だが、適度に崩れた字と味のある可愛い絵は好評だった。