二年目の春・9
「何故だ! 貴女は誰よりも世界を! 人々の幸せを願っていたはずだ!!」
「今必要なのは英雄じゃないんだよ。 魔法世界と旧世界の人々が少しでも相互に理解し、よき隣人として信頼関係を築く。 その上でみんなで世界と向き合う必要があるはずだ。 少なくともアタシはそう考えてる。」
クルトは剣で押し通ろうと戦いを挑んだが、実戦経験が豊富な高畑ならいざ知らずクルトでは多勢に無勢だった。
そもそもクルトを捕まえに来たのは、かつてアリカ女王の処刑を数人の人間に邪魔され身柄を奪われた事の反省から組織された特別な部隊になる。
偉大なる魔法使い鎮圧部隊。
そんな異名があり、単純な数の力ではなく領域内に高重力を発生させる罠や局地的な魔力封鎖をも可能とする特殊部隊だった。
結局奮闘むなしく捕まり取り押さえられたクルトは、エレーヌに納得がいかない胸のうちをぶつけるものの、彼女はクルトとは違う答えを語ることしか出来ない。
「そんな時間はもう無いんだ! だから私は!!」
「時間はあるさ。 少なくともアタシは信じてる。 人は諦めない限りは可能性があるってね。」
メガロメセンブリアの兵士達が見守る中、クルトは最後の最後まで自身の主張を続けるが、信念の元に生きているのはエレーヌとて同じだ。
「ミス・エレーヌ。 そろそろ……」
「ああ、もういいよ。」
そしてメガロメセンブリア兵の指揮官らしき男は、取り押さえられたクルトとエレーヌが会話するのをそのまま待っていたが、話が平行線のまま止まるとエレーヌに断りを入れてクルトを連行していく。
史実ではグレーゾーンや違法行為をしながらも、最終的にはネギ・スプリングフィールドとの繋がりを利用して、世界の為に良くも悪くも動いた男の逮捕だった。
「上手くいかないもんだね。」
再び無人になった広野でエレーヌは一人、風に掻き消されそうな声で囁いていた。
クルトにも多くの人々が期待していた。
赤き翼の後継者として、世界を人々を導いてくれると。
しかし、クルトは人々ではなく過去と未来しか見て居なかった。
少なくともエレーヌにはそうとしか見えなかった。
もしかしたら高畑が居れば、もっと違った結果になったのかもしれないと彼女ですら思う。
だが高畑は過去と未来よりも目の前の現実を見る事で、クルトの元を去った。
「麻帆良か……」
思えば高畑が魔法世界を離れたのは、正解だったとエレーヌは思う。
魔法世界で戦っていれば、高畑も同じく現実を見失ったままだった可能性が高い。
この時エレーヌは、高畑がどんな生活をして変わったのか少し気になった。
一体何が高畑を過去の呪縛から解き放ったのか、それを把握していれば、あるいはクルトもと考えてしまう。
「代表。」
「ああ。 帰ろうか。 アタシ達の現実に……」
いつの間にか、迎えの人間が間近に来ていた。
悠久の風は、魔法世界と地球の狭間で双方の為に働く団体だ。
クルトの一件が片付けば、また彼らは彼らの現実に戻るだけだった。
立派な魔法使いとしてではなく、一人の人間としてエレーヌはクルトとは違う道を信じて進むだけである。
そんな彼女達のような者達も、メガロメセンブリアにはまた多い。
世界の終わりが来ることを知りつつ、最後の最後まで諦めない彼女達こそ、魔法世界に残された最後の希望であり鍵となることになる。
「今必要なのは英雄じゃないんだよ。 魔法世界と旧世界の人々が少しでも相互に理解し、よき隣人として信頼関係を築く。 その上でみんなで世界と向き合う必要があるはずだ。 少なくともアタシはそう考えてる。」
クルトは剣で押し通ろうと戦いを挑んだが、実戦経験が豊富な高畑ならいざ知らずクルトでは多勢に無勢だった。
そもそもクルトを捕まえに来たのは、かつてアリカ女王の処刑を数人の人間に邪魔され身柄を奪われた事の反省から組織された特別な部隊になる。
偉大なる魔法使い鎮圧部隊。
そんな異名があり、単純な数の力ではなく領域内に高重力を発生させる罠や局地的な魔力封鎖をも可能とする特殊部隊だった。
結局奮闘むなしく捕まり取り押さえられたクルトは、エレーヌに納得がいかない胸のうちをぶつけるものの、彼女はクルトとは違う答えを語ることしか出来ない。
「そんな時間はもう無いんだ! だから私は!!」
「時間はあるさ。 少なくともアタシは信じてる。 人は諦めない限りは可能性があるってね。」
メガロメセンブリアの兵士達が見守る中、クルトは最後の最後まで自身の主張を続けるが、信念の元に生きているのはエレーヌとて同じだ。
「ミス・エレーヌ。 そろそろ……」
「ああ、もういいよ。」
そしてメガロメセンブリア兵の指揮官らしき男は、取り押さえられたクルトとエレーヌが会話するのをそのまま待っていたが、話が平行線のまま止まるとエレーヌに断りを入れてクルトを連行していく。
史実ではグレーゾーンや違法行為をしながらも、最終的にはネギ・スプリングフィールドとの繋がりを利用して、世界の為に良くも悪くも動いた男の逮捕だった。
「上手くいかないもんだね。」
再び無人になった広野でエレーヌは一人、風に掻き消されそうな声で囁いていた。
クルトにも多くの人々が期待していた。
赤き翼の後継者として、世界を人々を導いてくれると。
しかし、クルトは人々ではなく過去と未来しか見て居なかった。
少なくともエレーヌにはそうとしか見えなかった。
もしかしたら高畑が居れば、もっと違った結果になったのかもしれないと彼女ですら思う。
だが高畑は過去と未来よりも目の前の現実を見る事で、クルトの元を去った。
「麻帆良か……」
思えば高畑が魔法世界を離れたのは、正解だったとエレーヌは思う。
魔法世界で戦っていれば、高畑も同じく現実を見失ったままだった可能性が高い。
この時エレーヌは、高畑がどんな生活をして変わったのか少し気になった。
一体何が高畑を過去の呪縛から解き放ったのか、それを把握していれば、あるいはクルトもと考えてしまう。
「代表。」
「ああ。 帰ろうか。 アタシ達の現実に……」
いつの間にか、迎えの人間が間近に来ていた。
悠久の風は、魔法世界と地球の狭間で双方の為に働く団体だ。
クルトの一件が片付けば、また彼らは彼らの現実に戻るだけだった。
立派な魔法使いとしてではなく、一人の人間としてエレーヌはクルトとは違う道を信じて進むだけである。
そんな彼女達のような者達も、メガロメセンブリアにはまた多い。
世界の終わりが来ることを知りつつ、最後の最後まで諦めない彼女達こそ、魔法世界に残された最後の希望であり鍵となることになる。