二年目の春・9

そのまま横島達とスリの被害者達は、近くにあった麻帆良祭実行委員会の臨時支部に到着していた。


「実はね。 今日は朝から財布を落としたって、届け出が多くてね。 探していたんだ。」

まき絵の財布以外は学園の側で確認して本人に返すことになるようだが、あのスリにはどうやら余罪がまだまだありそうな感じだった。

まあガンドルフィーニは言わなかったが、魔方を使った犯罪の可能性も考慮して探していたらしい。


「全然気付かなかったよ。」

「私も気付かなかったわ。」

被害者達はまき絵も含めて全く気付かなかったらしく、怒りはあるがそれ以上に驚きも大きい様子になる。

彼女達は財布も中身も無事に戻ってきたので、ホッとしているのが一番だろうが。


「あのスリはどうなるんですか?」

「少し話を聞いて警察行きかな。どうも日本人じゃないようだしね。」

一般人の裕奈とアキラや他の被害者達も居るため、横島もガンドルフィーニも裏の話は出来ずに、簡単な説明をされたあとに後日警察から事情を聞かれるかもしれないと言われ帰ることになる。



「お手柄だったわね。 あのスリ私達も探してたのよ。」

その後横島達は屋台で夕食を買って帰り、横島の店で食べると裕奈とアキラは一足先に帰って、店では何時ものメンバーが寛いでいた。

そこにやって来た刀子は、店に来るなりスリの裏事情を語り始める。


「では魔法を悪用したスリだったのですか?」

「ええ。 誰も気付かなかったのは、その影響もあるわね。」

「やっぱり居るのね。 魔法を悪用する人。」

「そりゃ居るでしょ。」

どうやら魔法を悪用したスリが出没していると、関係者で探していたらしい。

ただここで問題だったのは、スリが一人ではなかったことか。

魔法協会の人間が何人かまえていたが、相手の全容が分からず警戒していたようである。

麻帆良祭はとにかく外部の人間が増えるので、学校でも気を付けるようにと注意していた。

しかし平和ボケと言うか、実際には早々犯罪に巻き込まれる事もないので、あまり気にしない生徒が大半なのが現状だった。

ちなみに少女達は初めて明解な魔法犯罪を目撃したが、全体として冷静である。

刀子も高畑も、魔法は世のため人のためなんて綺麗事は教えてないし、普通に考えると魔法の犯罪もあるのは当然だと受け止めていた。


「調べてみたら、他国の魔法協会から指名手配もされてるのよね。 どのみち二度と魔法を悪用出来ないでしょうね。」

このあとの犯人の身柄は関東魔法協会で調べたあとに、魔法犯罪者として魔法を知る警察上層部へ引き渡されて、最終的に犯人の本国に強制送還されることになる。


「記憶を消されるんですか?」

「国によるわね。 魔法の悪用に厳しい国だと死刑もありうるわ。」

少女達の何人かは犯人の処罰が気になるようだったが、刀子は少し険しい表情で厳しい処罰になることを告げる。

スリは魔法の秘匿を脅かした罪もあるし、表沙汰に出来ない分だけ魔法犯罪の処罰は厳しい傾向にある。

尤も日本や先進国のようにきちんと人権を考慮する国もあるが、表沙汰に出来ない事だと人権を無視する国は少なくない。

今回の犯人は特に中華系犯罪者だったため、まず二度と日本に来ることはないだろう。

少女達の中でまた魔法の価値が微妙に下がったが、元々高くないので今更でもあった。


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