二年目の春・9

仮設店舗のお客さんが居なくなる頃になると、いよいよ麻帆良祭の前夜祭が始まる。

準備期間からお祭り騒ぎのところもあるが、本格的な麻帆良全体の祭りとなるのは前夜祭からになる。

まあ中等部や高等部はまだ準備が終わってないところも多く、それどころではないが。

3ーAの少女達もクラスの店はいいが、部活やサークルの出し物や最終打ち合わせなどで、半分ほどは夕方前から校舎の方に行っている。


「タマちゃん、終わった?」

「うん!」

閉店した店の後片付けや一部修理に明日の仕込みなどしていたメンバーは、いつの間にか日が暮れて花火が上がる頃になると、ようやく作業を終えていた。

店の外には夜間も立体映像とライトアップをしているので、見物人が結構集まり写真を取ったりしている。

こちらでも人気なタマモは、いろんな人に声を掛けられては一緒に写真を撮るなどしていた。


「ねえ、せっかくだから世界樹前広場に行こうよ!」

「いいわね。」

店の後片付けも終わり、結局いつものメンバーに裕奈とアキラが横島の元に残っていて、特に二人以外は異空間アジトで休んでる事もあり元気だ。

まだ帰るようなテンションではなく、みんなでメイン会場である世界樹前広場に行く事になる。


「へぇ。 そんなことあったんだ。」

「葛葉先生といい、アナスタシアさんといい。 モテるのね。」

たわいもない会話をしながら路面電車で世界樹前広場に向かう一行だが、話題は昼間のストーカーの件になる。

裕奈とアキラにとってアナスタシアは、あまりよく知らない人であるが、ストーカーされていたと聞くと興味を持ったらしい。

刀子が去年の後半からモテ始めたのは、女子の間では有名らしく知っているが。

アナスタシアといい刀子といい、そして今も周りを固めてる友人達といい、横島の何処がそんなにいいのか裕奈とアキラには少し理解出来なかった。

無論面白いし悪い人でないのは理解してるが。

しかしそこまで横島に拘る理由が二人には分からないらしい。


「大学部だとコンパとか珍しくないって聞くけどね。 そこそこ見た目いいなら、そっち参加した方いいのに。」

「コンパか。 大学生に知り合いは何人も居るが、俺は一度も誘われんのは何故だ! 盛り上げる自信あるんだぞ!」

「何故って、そりゃ美味しいとこ持っていくと思われてるからでしょ。」

一方横島と周囲は昼間のストーカーから大学生のコンパの話になるが、横島は未だに一度もコンパに誘われないことを不満げにぶちまける。

大学生の横島に対するイメージは悪くはないが、とにかくモテるイメージが先行するし、それに少女達や刀子の誰か一人は彼女だろうと見られてるので誘ってもらえるはずがなかった。

誘えば一番人気を平然とお持ち帰りするイメージが一般的だろう。


「そんなことしたことねえのになぁ。」

「説得力ないですよ。」

ただ今の横島も桜子とまき絵に両隣から引っ付かれているし、周囲には友人としてみるには近すぎる少女達が居る。

誰がどう見ても、これ以上横島に女を紹介するはずがなかった。

当然ながら美少女を侍らせてる横島の姿は周りに見られていて、あぶれた男達の嫉妬を集めているが、まあ何時ものことだった。

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