二年目の春・9

「僕の何処が駄目なんだ!」

「全てだ。 虫酸が走る。」

アナスタシアが来た事で残念イケメン改め、ストーカーはヒートアップしてしまい、横島達や周りがドン引きしてるのに気付いていない。

冷たくバッサリと切り捨てるかのようにハッキリ言うアナスタシアにも、めげない根性だけは凄いと思うが。


「そんなロリコンの何処がいいんだ!」

「誰がロリコンだ。 誰が。」

「中学生に手当たり次第に手を出す奴が、ロリコンじゃなくてなんなんだ!」

ただストーカーも多少は理性があるのか、矛先を横島に向けるが横島とすれば濡れ衣であり反論もする。

しかしロリコン呼ばわりにカチンと来ていたのは、他ならぬ夕映とのどかだった。


「いけませんか? 中学生が横島さんと一緒に居ては?」

「酷いです。」

夕映はすかさず口を挟み反論すると、のどかは涙目になりストーカーを睨む。


「人を見た目でしか判断出来ない、貴方のような人と横島さんや私達を一緒にしないで下さい。 アナスタシアさんのことなど何も知らない癖に、愚か者としか言いようがありません。」

そんな夕映が口を開くと、アナスタシアや横島はもちろんながら周りの野次馬の注目も集まる。

夕映の方は頭の回転と口は上手いので、畳み掛けるように責めると、ストーカーはぐうの音も出ないほどはっきりと言われてしまう。


「ヤりたいだけなのでしょう? 風俗にでも行ってください。」

最後にトドメと言わんばかりに吐き捨てるように、中学生らしくない台詞を口にすると、アナスタシアは可笑しそうに笑い出す。


「行くぞ。貴様らが遅いから探していたんだ。」

年端もいかぬ夕映に徹底的に断罪されたストーカーが放心状態となる中、アナスタシアは何事もなかったかのように夕映達や横島を引き連れてストーカーの真横を通りすぎていく。


「いっしょにおやつたべようって、さがしてたんだよ!」

ちなみにさよは初めての経験にオロオロとしているばかりで、タマモはよく分からないが悪い人だと睨んでいた。

タマモに至っては口を挟もうとしていた程だが、話がおかしくなるのでチャチャゼロが止めて居たりする。


「おう。 そんじゃおやつ食べに行くか。」

「うん!」

最早ストーカーの存在など忘れたかのように団欒風景で楽しげに歩いていく横島達を、野次馬達は驚きのよう表情で見送っていた。


「スゲー。」

「アナスタシアさんの冷たい視線。 いい。」

「違うだろ!?」

結果として日頃から女王様のようなアナスタシアは、この件で更にコアなファンを増やすことになり、夕映はストーカーの残念イケメンな大学生を、ボロクソに切って捨てた女の子として名が知られることになる。

そして色々噂が有りすぎてよく分からないと見られていた横島が、本当にモテてるのだとこの改めて証明してしまうことになるのは、少し皮肉なことかもしれない。

なおストーカーはアナスタシアに毛虫の如く嫌われ、大学部では礼儀正しく気が利くと密かな見守り隊が居る、夕映をマジギレさせてのどかを泣かせそうになった男として有名となる。


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