二年目の春・9

食事を終えた一行は、ゆっくりと宮殿や周辺の街を散策していた。

特にスケジュールや行く場所も決めてなく、のんびりとした時間を過ごしていく。

異国の街と、そこで暮らすハニワ兵達の様子を眺めてるだけで、結構楽しめる。

全体として時代はバラバラだが、建物の形からドアや家具などは、日本とも麻帆良とも違う海外のサイズと形なのだ。


「うわぁ、くつやさんだ!」

当然ハニワ兵達が住む街なので、生活の営みもあるし日常的な光景もある。

そんな中でタマモと少女達が特に興味を示したのは、昔ながらの手作りの方法で、人間サイズの靴を作っていた靴屋さんだった。

ガラスのショーウィンドウ越しに、キリッとした職人ハニワ兵が靴を作る姿は、童話か何かに出てくる小人の妖精のようにも見える。

ハニワだけど。


「こんにちは!」

「ぽー」

元気よく挨拶をして店内に入ったタマモに、職人ハニワ兵は少し無愛想な様子で返事をする。

別にタマモや少女達がどうとかではなく、今は手が離せないと言いたげな様子であった。


「手作りの靴なんて履いたことないわ。」

「結構いい物よ。 履き心地が違うわ。」

靴を作る様子を見物しながら、完成して展示してある靴なども見ていくが、それは芸術品と言える程に丁寧に作られた一点物だ。

メンバーの中でオーダーメイドの靴など履いたことがあるのは、やはり雪広姉妹と千鶴くらいで、例外を上げるとすれば長生きしてるアナスタシアもあるだろう。


「ぽー!?」

「ぽー!」

「うーん、お弟子さん?」

しばらく靴屋で見物していると、何やら荷物を抱えたハニワ兵が帰って来て、一行に驚き慌ててどうしようとオロオロしている。

どっしりと構えて慌てないハニワ兵が一喝すると、慌てていたハニワ兵が落ち着く姿に、少女達はなんとなく頑固な職人と弟子の関係かと想像すると、見事にその通りであった。


「私にも靴作って!」

ただここで桜子が靴を作って欲しいと言い出すと、職人ハニワ兵はちらりと桜子を見て、何の反応もないまま作業を再開する。

周りの少女達は駄目なのかなと見ていると、弟子のハニワ兵が代わりに、桜子の足のサイズと型どりをしてどんな靴がいいかと聞いたりする仕事を始めた。

頑固そうな職人ハニワ兵だが、靴作りは好きらしく黙々と靴を作り弟子のハニワ兵が雑用などをこなす役割があるらしい。

対称的に弟子のハニワ兵は嬉しそうであり、自分たちの靴を履いてもらえるのが嬉しいようだ。

ハニワ兵はぶっちゃけ靴を履く必要もない訳で、職人ハニワ兵も内心では、自分の靴を履いてもらえるのが嬉しいのが本音だろう。

結局横島と女性陣はみんな一人一足ずつ、靴を注文することになる。

職人ハニワ兵は任せろと自信に満ちた表情で、和気あいあいとサイズを計り、どんな靴がいいかと注文する少女達を見つめていた。


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