二年目の春・9

「ハッハハハ! 私に勝とうなど百年早いわ!」

みんなでかくれんぼが終わったが、最後まで隠れていたのはアナスタシアだった。

ご機嫌な様子で高笑いを始めると、例によってタマモも同じく高笑いを始めてしまい、ハニワ兵達はすげえと尊敬の眼差しを向けている。


「次は一番に見つけるんだから!」

鬼だったまき絵が悔しそうにするのも無理はない。

アナスタシアはまき絵が数を数えていた木の上に居て、昼寝をしながら待っていたのだ。

やっぱり魔王様はスゲーとハニワ兵の好感度が爆上げになったらしい。


「タマちゃん、楽しかった?」

「うん! おしろのいろんなとこらに、いったしたのしかったよ!」

一方タマモはみんなとハニワ兵達でおもいっきり遊んで、満足げだった。

見知らぬ宮殿を探検しながら、見つかるか見つからないかとドキドキしたようである。


「お腹空いたね。」

「ご飯にしよっか。」

ちなみに横島とあやかが二人でイチャついていたとまき絵が騒ぎ、軽い騒動になったが濡れ衣だった。

そんな騒ぎなどありつつ、その後一行は宮殿の食堂でお昼にすることになる。


「フレンチ定食?」

「アントワネット御膳?」

ただし、この食堂もまた一筋縄ではいかない物だった。

一応本格的なフレンチはあるが、中には定食や御膳やらがあってハニワ兵達にはそちらが人気らしい。

建物は文化的な価値と歴史を尊重して、オリジナルにかなり忠実に再現したが、後は必ずしも歴史や文化に拘ってる訳ではないらしい。


「お洋服汚さないように、気を付けなきゃあかんえ。」

「うん!」

全体の雰囲気は宮殿の食事と言うよりは、やはり街の大衆食堂といった感じか。

むろんハニワ兵にも個性はあるが、全体として堅苦しいよりはみんなで和気あいあいとした雰囲気が好まれるらしい。


「いいワイン出してんな~」

「昼間からお酒なんて、ちょっと抵抗感があるわね。」

料理の味は宮殿に相応しい物だった。

最高級の食材を丁寧に調理してるのが分かり、一緒に提供するお酒もかなり上物らしい。

昼間から宮殿でお酒と料理という贅沢に、刀子は少しいいのかなとも思うらしいが、あくまで食事のお供に飲む程度だ。


「ふむ。 また相手をしてやろう。」

なおここで人気なのはやはりアナスタシアで、彼女は多くのハニワ兵達に声を掛けられては一緒に乾杯したりと、やはりご機嫌な様子である。

他にはサムライマスターの娘として、こちらで有名な木乃香なんかも人気だし、タマモも横島と一緒に暮らしてるのが知られてるらしく結構人気のようだ。

結局横島達は、ここでもハニワ兵達と和気あいあいとした昼食をたのしむことになる。


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