二年目の春・9

「中も凄いわね。」

ドレス姿の女性陣と横島達は、そのままベルサイユ宮殿の見学を始める。

宮殿の再現は完璧なようで、本物に負けず劣らず豪華で素晴らしい物だった。

映画の世界にでも迷い込んだような、とでも言いたくなるような完璧な世界になる。

ただ観光客らしきハニワ兵が多数居るので、そこは妙にリアリティがある光景だが。

壁の壁画や柱の彫刻一つ取っても日本にはない物で、麻帆良は比較的西洋風な建物があるが、本物は別格だと感じる程だ。


「広すぎて迷子になりそうだね。」

「ほんまや。」

少女達は雪広邸と比べる者もいるが、はっきり言えばこちらはスケールが違いすぎる。

ちなみに観光客のハニワ兵達はベルサイユ宮殿もそうだが、横島や少女達の方も注目を集めていて、一緒に写真を撮って欲しいと頼まれたりと、ちょっとした有名人気分を味わっていた。

タマモなんかは麻帆良祭の仮設店舗でよく写真をお願いされるので、すっかり慣れてしまい好きなポーズを決めたりとサービスしている。


「ここは?」

「レストランみたいね。」

途中から見てるのか見られてるのか分からなくなる一行だが、大きな食堂に到着すると、そこではハニワ兵達が食事をしている姿があった。

本物のベルサイユ宮殿ではあり得ないことだが、ここは再現された場所なので宮殿の中で食事も出来るし、庭でお茶を飲むことも出来てハニワ兵達に人気らしい。


「ごはん!?」

「まだ早くない? 庭でお茶しようよ。」

なお食いしん坊の桜子はさっそく食事をしたいと瞳を輝かせるが、まだお昼には少し早い。

ただまあ、豪華な部屋から厨房などの裏側まで見て歩いていると少し休みたいようで、庭園でお茶を飲みながら休憩することにした。


「でもさ、これって建てるのにいくら掛かったんだろう?」

「さあな。ここお金のシステムがないからなぁ。」

世界遺産クラスの宮殿の庭で高そうな椅子とテーブルで、優雅なティータイムにする一行だが、自然とリラックス出来ているのはアナスタシアや雪広姉妹にまき絵や桜子にタマモなどで、他は衣装を汚さないかとか細かいことを気にしてしまう。

そんな中でふと誰かが建築費は幾らなのかと気になり尋ねるも、横島は当然知るはずもないし、庭でお茶を運ぶ給仕をしてるハニワ兵達に聞いても誰も知らなかった。

そもそもお金という物が存在しない異空間アジトにて、金銭的な費用なんて考える者は滅多に居ない。

一応物資やコストを管理するハニワ兵も居るには居るが、かつてのように異空間アジトの外に物資を供給するならともかく、趣味の建築費まで考えるのはごく少数だけだろう。

まあ調べれば、そんな費用なんかを調べて記録に残してるハニワ兵も居るはずだが。


「このあとどうする?」

「みんなでかくれんぼしよう!」

「タマちゃん。ここはかくれんぼするとこじゃないわよ。」

「ぽー!?」

「ぽぽー!?!?」

一休みした一行はこのあと何処を見学しようかと話始めるが、タマモがせっかく広いお城に来たんだから、かくれんぼをしたいと言い出してしまう。

流石に駄目だと苦笑いする少女達と対照的に、ハニワ兵達は衝撃を受けた表情をしたあとに瞳を輝かせ始める。

どうやら、せっかく横島達が来たんだから一緒にかくれんぼをしてみたいらしい。



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