二年目の春・9

「タマちゃん。 走ったら危ないわよ!」

横島とハニワ兵達が待ってること数十分、少し眠気が襲って来た頃に最初に戻ってきたのは、タマモと明日菜だった。

早くドレス姿を見せたいのか、嬉しそうに走ってくるタマモを慣れないドレスに動きにくそうな明日菜が慌てて追いかけている。


「みて!みて!」

横島達の元にたどり着いたタマモは子供用の可愛らしいドレス姿で、くるりと回転して戦隊物のようなポーズを決めた。


「おお! よく似合ってるな!」

「ぽー!」

「ぽー! ぽー!」

なんか違うとその姿に思うも、幼いながらも傾国の美女の片鱗は見えていてドレスはよく似合っている。

ハニワ兵達もそんなタマモの周りを駆け回り、いつもと違うタマモに驚きながら似合うと褒めていた。


「明日菜ちゃんもよく似合ってるな~。 そうだ、写真撮ってあとで高畑先生に送ってやろう」

「ちょっと!? 横島さん!?」

一方タマモを心配して追いかけて来た明日菜は、横島達の微笑ましい団欒風景を少し離れた場所で見ていた。

タマモにとってやはり横島は、かけがえのない家族なんだなと改めて思うようである。

ただ横島はそんな明日菜の姿に、少し驚きつつ見入ってしまう。

普段の明日菜はドレスどころか、女の子らしい服もあまり着ないが、思わず見入ってしまうくらいに似合っている。


「高畑先生も喜ぶぞ。」

「結構恥ずかしいんですよ! 動きにくいですし。」

相変わらず女心を微妙に勘違いしてる横島に、明日菜は仕方ないと言いたげであるが、何処かホッとするというか嬉しそうだ。

歯の浮くような台詞が欲しい訳ではない。

ただ似合ってると一言言われるだけで明日菜は十分だった。


「マスター! どう!?」

「惚れ直した?」

そのままならば、もう少し甘い空気になりそうなところなのだが、生憎とそこに至る前に他の少女達が次々とやって来てしまい、いつもと同じ賑やかな様子になってしまう。


「みんな、似合うな。 世が世ならお姫様にでもなれそうだぞ。」

美砂や桜子にまき絵などは露骨なまでにアピールしていて、夕映やのどかなんかは控え目だ。

雪広姉妹に千鶴なんかはアピールしなくても存在感を発揮してるし、少し恥ずかしそうな刀子は逆にレアな姿を晒していてこれもまた良かった。

ちなみにチャチャゼロも着替えていて、タマモと一緒に手を繋いで踊る真似をしてる。

少し横島が驚いたのは、エヴァがアナスタシアバージョンになり大人の姿で着替えて来たことか。

日頃からドレスっぽい服を着てるだけに、一番違和感なく着なれている。

まあ歳も歳だし着なれていても不思議ではないが。


「みんな化粧してるの、珍しいな。 大人顔負けだぞ。」

女は化粧で化けるとも言うが、今回は日頃化粧など全くしないメンバーも簡単にだが、化粧をしたらしく雰囲気が違う。

出会ってから一年は過ぎているが、確実に成長して大人の階段を駆け上がっているのを改めて横島に感じさせる。

ちなみにドレスは当然として宝石やアクセサリー類は全部本物であり、そこらのコスプレとは訳が違う。


「でもさ。いいんちょ達とかアナスタシアさん見てると、自信が持てないのよね。」

なおドレスは胸元を強調したものも多く、雪広姉妹に千鶴やアナスタシアはそのタイプを着ていてるので、本当に別格というか少女達から見てもあれは反則だという呟きが聞こえるが。

とはいえ自分達とハニワ兵しか居ないここでは、誰に配慮する必要も遠慮する必要もない。

それぞれが本当に楽しんでドレスを着たようで、用意していた貸衣装屋のハニワ兵も満足げに見ていた。

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