二年目の春・8

一方チャチャゼロと散歩に出掛けたタマモだが、いつものようにチャチャゼロをリュックに入れてお散歩中だ。

ここ異空間アジトではチャチャゼロも隠れる必要などないのだが、なんとなくこの形の散歩が気に入ってるらしい。


「こんにちは!」

「ぽー!? ぽー!」

タマモ達の別荘の両隣はようやく建物の外観が出来た頃で、内装を工事しているハニワ兵達がいる。

麻帆良でも散歩途中に建築現場があれば、かならず挨拶をして眺めてるタマモは、ここでも両隣のハニワ兵達に挨拶をしてしばし働く姿を見学していた。

何もない場所に一から家などの建物を造り上げる大工さんは、タマモにとって魔法使いにも思える。

安全第一と書かれたヘルメットを被り作業をするハニワ兵達をしばし見学したタマモは、散歩を再開する。


「わあ! うみだ!」

別荘の近所もまだ建築途中の建物ばかりなのでご近所さんは居ないが、しばらく歩く海が見えて来た。


「危ネエカラ、気ヲ付ケロヨ。」

「うん!」

タマモ達の別荘からは歩いて数分の位置に砂浜もあり、海は見慣れた物だが場所を変えれば景色も変わる。

タマモの身長より高い草が生い茂る獣道を歩いていくと、海が見えて来てタマモは嬉しそうに砂浜に駆けていく。

ガキのお守りかと最初はぼやいていたチャチャゼロも、タマモと散歩をするようになってから意外に散歩好きになっていた。

時にはエヴァとの昔話を語りつつ、一緒に出掛けるのを楽しみにしているようだ。


「ぽー!」

「こんにちは!」

砂浜を鼻唄混じりに更に歩いていくと、砂浜で釣りをしてる二体のハニワ兵に出会す。

どうやらそこは釣りの穴場らしく、ハニワ兵のクーラーボックスには大きな魚が何匹も入っている。


「おさかなさんたべるの?」

「ぽー」

二体のハニワ兵はちょうど少し遅い朝御飯にするらしく、器用に釣りたての魚を捌いてお刺身にしていく。

砂浜に座ったタマモとチャチャゼロは、そんな二体のハニワ兵に誘われて一緒に新鮮な魚を頂くことになった。


「おいしい!」

「歯ゴタエガイイナ。」

同時に焚き火にて魚を串焼きにもしていて、プリプリの新鮮な魚は歯ごたえもよく美味しい。

彼らの近くには空飛ぶキャンピングカーがあり、魚拓や魚の写真がたくさん貼られている。

どうやら彼らはその空飛ぶキャンピングカーで、世界を周り釣りをしてるらしい。

チャチャゼロに至ってはハニワ兵達の秘蔵の酒をご馳走になり上機嫌な様子で、タマモと共にハニワ兵達の旅の話を身振り手振りと筆談を交えて聞いていた。

その後二人はハニワ兵達に別れを告げて、また散歩を再開する。

まだ見ぬ出会いを楽しみにしながら。



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