二年目の春・8

「まき絵さんは元気ですわね。」

一方あやかは二階のテラスにて、姉のさやかと千鶴と夏美と亜子の五人で優雅な朝のティータイムを満喫していた。

今回訪れたメンバーで言えば刀子とあやかが一番休息が必要であり、特にあやかはクラスの仕事がなくても麻帆良カレーや納涼祭のイベントなどで連絡が来たりと忙しい。

ただ異空間アジトに来てる時だけは、携帯電話も置いてきたので本当にゆっくり出来る時間になる。


「まき絵やからね。」

バカピンクとのアダ名を持つまき絵は、とにかく元気だった。

二階のテラスにも聞こえるまき絵の声に、親友の亜子は笑いながらまき絵らしいと改めて思う。

ちなみに夏美は、お金持ちのティータイムのような雰囲気に、ちょっと場違いかなと落ち着かない様子である。

自称庶民の横島と違い本当の庶民の夏美は、未だに自分がこのメンバーと一緒に居て良いのか疑問を感じていた。

まあ周りは誰も気にしてないのだが。


「それじゃもう一回合わせるよ!」

「オッケー!」

そして別の部屋では、美砂・円・桜子の三人が間近に迫った麻帆良祭に向けて楽器の練習に励んでいた。

すでに軽音コンテストにはエントリーしていて、バンド名はやはり『でこぴんロケット』になる。

バンド名はいろいろ考え、一時期別のバンド名に決まりそうになったが、最終的にはタマモが一番気に入ったでこぴんロケットになったようだった。

ステージ衣装は横島宅のハニワ兵が張り切っていて、後は本番に向けて練習あるのみなのだが、横島はすでに完璧に出来てるので問題は美砂達が合うかにかかっている。

ちなみにタマモに関しては一部をソロで演奏させる代わりに、他は演奏に参加しないことになった。

流石にみんなに合わせて演奏するのは無理があったようだ。


「そこ、トーンが違う!」

そしてまた別の部屋ではハルナが夕映とのどかと二体のハニワ兵達に手伝ってもらいながら、怪しげな同人誌の製作の追い込みをしていた。

麻帆良時間では麻帆良祭まであと一日しかなく、ハルナが参加する同人誌の非公式即売会までは二日しかない。

異空間アジトに来たメンバーの中でハルナだけは徹夜をしていて、この日も屋敷の管理をしてるハニワ兵達に同人誌の製作を手伝ってもらっている。

内容はタマモには絶対に見せられない物なので、タマモが見に来た時には健全な同人誌に差し替える少し姑息な工作をしてまで製作を急いでいた。


「ハルナ。 今年は諦めたら?」

「何言ってんの! 今年出さないでいつ出すのよ! 今日中に仕上げてハニワさんに印刷頼むんだから!」

どうも絵本の製作を優先した影響で、彼女の同人誌の製作は危機的な遅れになっているらしい。

のどかは何も無理に麻帆良祭に出さなくてもと言いたげな様子であるが、ハルナは諦める気はないようだった。



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