二年目の春・8

「全く……」

ハルナに予期せぬ暴露をされた刀子は、疲れた表情で何度目か分からぬため息を溢した。


「はっきり断ればいいのに。」

「断ったわよ。 でも他の先生が応援するような空気になってるの。」

少女達ははっきり断わるべきだと主張するし、刀子もその気がないので誘いははっきり断っている。

ただ複数の男性教師が応援していて、諦めるなと言いながら煽っているらしい。


「うーん。 それかなり迷惑ね。」

男性教師達は刀子に好意を持つ中山先生寄りの善意だが、刀子からするとかなり困った状況になる。


「マスター! 何か一発で解決する、便利アイテムないの?」

「俺はドラ〇もんじゃねえっつうの。 まあ無いこともないけど」

半ば野次馬根性で刀子の状況を聞く少女達だが、流石に少し大変そうだなと解決する方法を考えるが、簡単には思い浮かばない。

ここでまき絵は横島に期待するも、他の少女達は恋愛絡みで横島に期待してもダメだろうと言いたげである。


「てけてけってけ~、呪いの藁人形~!」

「なっ!?」

「本物なの!?」

「何てもの出すのよ!」

期待するまき絵に横島は影の中に手を突っ込み、某猫型ロボットの声真似で出してきたのは、横島お手製の呪いの藁人形だった。


「みんな、大袈裟ね。 まさか、本物な訳ないじゃん。」

「いや、本物だぞ。 試してみるか?」

「駄目に決まってるでしょ!」

「駄目か? じゃあ、惚れ薬ならぬ嫌われ薬の原液と中和剤とかは?」

「何でそんなもの持ってるんですかー!」

横島からすれば三種の神器と言える呪いの藁人形だが、少女達には当然不評で没収されてしまう。

俺の刀子さんに手を出す奴なんて、呪っちまえばいいんだという横島の過激な思考はあまり受け入れられないらしい。

続けて横島は昔痛い目を見た嫌われ薬を出すが、当然これも評判は最悪で少女達により没収され捨てられてしまう。


「あとなんかあったかなぁ。」

「もう何も出さなくていいです。」

横島をドラ〇もん扱いしてはいけない。 この時、その場に居た者の大半はそう固く心に誓う。

例外はエヴァとチャチャゼロくらいで、彼女達は面白そうに眺めていた。

恐らくエヴァは藁人形も嫌われ薬も同様の効果があるものを作れるのだろう。


「横島さんって、やっぱり横島さんなのよね。」

「うん。」

横島という男はいざという時には頼りになるし、人が出来ない事をたくさん出来るが、人とどっかずれてる男なのだと少女達はしみじみと思う。

藁人形も嫌われ薬も使えば騒動になるだけだと判断した、少女達は正しいだろう。

そして横島の影の中は危険な物がたくさんあると、少女達は改めて痛感していた。

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