二年目の春・8

耳を済ませば波の音が聞こえる。

連日の仮設店舗営業の休養の為にと、またもや異空間アジトに来ていた横島と少女達は、綺麗にライトアップされた別荘の庭でバーベキューをしていた。

他のクラスメートにちょっと悪いなという気持ちもあるが、タマモがちょっとお疲れ気味だったことと、このくらいの役得は許されるだろうと言うことで来ている。


「美味しいね!」

「うん!」

慣れてきたとはいえ一日働けば疲労は心身共に溜まる。

特に仕事に慣れてない少女達ならば尚更で、ランキングで上位を狙いつつ稼ぎたいとなると楽ではない。

バーベキューはお手軽に、異空間アジトで製造している焼き肉のタレをつけて食べる物を中心にしたが、評判は上々で少女達はリラックスした様子で食べている。

メンバーはエヴァとチャチャゼロや刀子に雪広さやかなど、結局いつものメンバーが集まっていた。


「刀子さん。お疲れっすね?」

「まあ、ちょっとね。」

中でも少々お疲れだったのは刀子になる。

自由な麻帆良生を監督する大変さもあるのだろうし、昼間にシャークティと話していた色恋沙汰も地味に疲れてる原因であった。

シャークティだけではなく同僚の教師にも、刀子が断った相手を応援するような人が何人か居るのだ。

悪い人ではないし応援するような同僚も善意なのだろうが、この忙しい時に余計な気遣いやら欲しくない配慮はストレスにしかならない。


「刀子さん、嫌ならはっきり断らないと勘違いしますよ?」

「早乙女さん?」

「ハルナ?」

「ふふふ。 実は刀子さんは社会科の中山先生に狙われてるのよ!」

「ちょっと!? 貴女、なんでその話を!?」

横島は単純に刀子が麻帆良祭の準備で疲れていたのかと思ったようだったが、地獄耳のハルナが疲れてる原因の一端を知っていたようで暴露すると、少女達と横島は驚き騒ぎだし刀子自身も慌ててしまう。


「誰だ! 俺の刀子さんに手を出す奴は!!」

「俺の?」

「女子中等部の社会科の先生よ。 見た目も評判も悪くない先生ね。」

特に横島は『俺の』という言葉をつい使ってしまい、少女達の視線を一身に浴びて刀子は満更でもない表情になる。

ここで逆に変な気を利かせて応援するような事を言えば、刀子のショックと疲労は増大するが、少女達がじわりじわりと横島の外堀を埋めていた事もあり、横島も周りの少女達や刀子に執着を見せるまでになっていた。

まあ横島的には半ば冗談のネタであるし、周りも理解してるが、笑顔で応援してると言われるよりは遥かにマシだった。


「相変わらず地獄耳ですね。」

「結構有名よ。 マスターと中山先生のどっち選ぶんだろうって。」

三度の飯より噂好きなハルナはシャークティと似たような噂を聞いていたようで、刀子は自分が思っていた以上に広がってる噂に深いため息を溢してしまう。

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