二年目の春・8

「今日も稼いだわね~」

さて仮設店舗を営業していた横島と少女達は、プレオープン四日目も無事に終えていた。

内装や椅子とテーブルに破損や汚れがないかを確認しつつ、後片付けと明日の仕込みに追われる。

明日でプレオープンも最後になるが、明日は前日祭や前夜祭で賑わうので、実質的には明日から祭り期間も同然になる。


「予想より来客数が落ちませんわね。」

「お客さんの回転率は、これ以上あげれませんよ。」

「仕込み量は決めるのは楽ですね。」

3ーAのファンタジーレストランは大人気だった。

小さなお子様からその親の世代や年配者までもが、子供を連れて訪れるし、学生達も女子や小中学生などには特に人気だ。

当初の予想では最初の一日か二日以降は少し落ち着くと見ていたが、来客数が店舗の上限で高止まりしてるのは嬉しい誤算になる。

ただ仕込み自体は廃棄を考えなくてもいいので楽で、とりあえずジャンジャン作ればいいだけだった。


「作者は早乙女でいいの?」

「違うわ! 作者はタマちゃん。 作画が私よ!」

ちなみにこの日は報道部のメンバーが閉店後に尋ねて来ていて、ハルナが半ば独断で売り出した絵本の取材をしたいと言うので、タマモと二人で受けている。

実際には原案がタマモで、作者はハルナという方が適性かもしれないが。


「じゃあ、タマモちゃん。 取材をお願いしていいかな?」

「はーい!」

閉店後の店内でハルナと一緒に何枚も写真を撮られながら、タマモは報道部の取材にニコニコと応じる。


「四日で百冊オーバーって凄いわね。」

「早乙女もこんなマトモな作画が描けるんだな。」

ハルナ自身はお騒がせ学生であり、報道部とも顔馴染みらしい。

そのため和やかな雰囲気で取材は進むが、マニアックな創作ばっかりして要注意人物にされてるハルナにしては、ビックリするほど真面目で清らかな絵本に報道部の面々は驚いている。


「私達で、目指せミリオンセラー作家よ!」

「早乙女。子供を出汁に使って売れようとしても駄目だと思う。」

絵本の評判はよく、一切の宣伝をしてないにも関わらず四日で百冊以上売れたのは驚くべき結果だ。

しかしハルナは現状に満足せず妄想にも等しい目標を掲げて、報道部や周りで後片付けしていたクラスメートに呆れられている。

タマモだけは意味を理解しておらず、ハルナが楽しそうだと笑っていたが。


「明日の麻帆良祭特集に使うと思うから楽しみにしててね!」

「うん!」

最近はすっかり写真を撮られることに慣れたタマモは、取材クルーの言葉を信じて自分達の店と絵本が新聞に掲載されることを楽しみにすることになる。

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