二年目の春・8

「タマモ。危ないことしたら駄目だぞ?」

「こまってるひとは、たすけなきなゅだめなんだよ!」

ナンパ野郎が警察に捕まり高音とも別れた横島達であるが、横島は無茶なことをしたタマモに注意しようとするも、タマモは無茶だとは思ってないようだった。

少女達の教育の賜物と言えるいい子になっているが、価値観というか危機感は本能任せなので、本能が働かない相手や状況だと怖いもの知らずらしい。


「いや、でもな?」

「周りに私達や大人が居る時は、一人で助けに行っちゃ駄目よ。みんなで助ければもっといいでしょう?」

「あっ! そっか!」

ぶっちゃけ横島としては見ず知らずの他人より自分の身を大切にして欲しいが、そこまではっきり言えずに困っていると、千鶴が一人で助けに行かないように言い聞かせていた。

やはりタマモの性格や行動は、横島の周りの少女達の教えがかなり影響してるらしい。


「ねえ、それよりなんでバナナの皮だったの?」

「特に理由なんてねえぞ。近くを見たらゴミ箱にあったから使っただけだ。手を出せば面倒なことになるし、いきなり金縛りにするのも不自然だろ?」

一方まき絵と明日菜は、なんてバナナの皮を使ったのかという根本的な疑問が気になったらしい。

横島としては特に理由はなく、目立たないようにやっただけで深い理由などない。


「ぶっ飛ばしちゃえば良かったのに! 車に無理矢理乗せようとするなんて怖いよ!」

「あの連中、放っておいてもろくな未来ないからな。 悪さのし過ぎで業を重ね過ぎなんだよ。」

「ごうってなに?」

「業か? うーん。 簡単に言えば、悪いことすると悪いポイントが貯まるんだよ。 貯まったポイントは自分の体と魂に刻み込まれて、人生に影響する。 正直あそこまで悪いポイント貯めた奴らは、こっちの世界に来て初めてだな。」

「ふーん。 会員カードみたいだね」

「気を付けないと家族とか恋人まで巻き込むからな。 あの連中が幸せな未来を掴むことはまずないな。」

少女達はあんなゲスな連中は許せないと怒りを露にして、特にまき絵はやっつけろと過激な事を口にする。

実は野郎に容赦するつもりがない横島も少し同じことを考えていたが、チラッと見たナンパ野郎達があまりに深い業を重ね過ぎてることと、それの報いを受ける姿がハッキリと見えていた。

こちらの世界に来てから使い道がまずないが、横島にはヒャクメの見る力があるので、一般人程度ならばその気になれば見えないことはなかった。

元々臆病な性格であり、日常生活で余計な事を見るのは怖いので、本当に使うことがない力なのだが。

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