二年目の春・8

午後になると横島は休憩に入ることになった。

少女達の方は部活やサークルの準備で出入りが激しいし、超包子からの助っ人も同じだ。

一番時間があるのは店を休んだ横島であるが、この日はタマモに明日菜・まき絵・千鶴というちょっと珍しい組み合わせの少女達と休憩が重なる。

お散歩に行きたいと瞳を輝かせるタマモに先導されるように、横島達は仮設店舗の近辺をぶらぶらと散歩することにした。


「また、いろいろ増えたなぁ。」

大学部近辺は相変わらず祭り当日のような賑わいで、日を追うごとに新しい屋台やイベントが増えてる。

中には『ポー』という語尾の、変な外人もちらほらと見受けられるが。


「止めてって、言ってるでしょ!」

「いいじゃねえか。 一緒に遊ぼうぜ。」

「貴方達! 何をしてるんですか!!」

しかし不特定多数の人が集まると、自然とトラブルも増えていて、二人の女子高生が悪質なナンパ野郎に絡まれてた。

絡んでるのはかなりヤバそうな五人で、ナンパ野郎達は自分達の黒いワンボックスの車に、無理矢理女子高生達を乗せようとしている。

ちょうどそこは大通りから一本裏に入った道なため混雑まではしてない場所で、周りには人が居るが助けに入るのを戸惑う中、颯爽と男達に立ち向かったのは高音・D・グッドマンとだった。


「なんだ? お前もオレ達と遊ぶか?」

「貴方達のような人は許しません!」

客観的に見て高校生の高音が止めに入り、男達が怯んだり改心するはずもない。

ナンパ野郎達は新しい獲物だとばかりに高音を舐めるように見ると、ゲスな笑みを浮かべて高音に近付く。


「だめ!」

ただ、ここで予想外の事が起こる。

目の前の困ってる人は助けなきゃダメだと思ったタマモが、高音とナンパ野郎の間に割り込んでしまったのだ。


「なんだ。 このガキは。」

「貴女、危ないから下がりなさい!?」

まさかのタマモの行動にナンパ野郎と高音は驚き、横島は頭を抱えた。

しかもタマモを助けようと、明日菜とまき絵も飛び出してしまい事態は混沌とする。


「止めなさいよ!」

「そうだよ!」

明日菜とまき絵は考えるより先に体が動いてしまったんだろうが、明日菜はタマモを抱き抱えつつナンパ野郎達を睨み非難するとまき絵も続く。

しかし高音に続き中学生の女の子二人が来たことで、ナンパ野郎達は標的を無理矢理ナンパしようとしていた女子高生から高音と明日菜達に切り換えようとしていた。


「こっちよ。大丈夫?」

ちなみに千鶴はその隙に女子高生達をナンパ野郎から引き離していて、冷静な彼女も介入している。


「みんな勇気あるなぁ。」

肝心の横島は周りで遠巻きに見てる大学生や一般人が戸惑う中、あっさり助けに入る少女達を感心したように眺めていた。

同じ学生の頃の自分に出来たかなと思うと、かなり怪しい。

どさくさに紛れて女の子を連れて逃げるくらいは、したかもしれないが。

87/100ページ
スキ