二年目の春・8
さてプレオープン四日目だが、この日も開店前から行列が出来ていた。
実際の評価もいいのだが、前評判がよく新規のお客さんが続々と来るので、混雑は当分減りそうもなかった。
「米が意外に美味いな。 炊き方がいいんだろうか。」
「ああ、美味い。」
そんなこの日店舗を訪れて食事をしていたのは、高等部調理科の三年の男子数名である。
彼らは高等部調理科の校舎で本番の三日間はレストランを営業する予定らしく、この日は話題の店の視察に来ていた。
本格的な料理人や料理人を目指す学生からは、実は3ーAの店は少し色物として見られている。
料理一本で勝負する彼らのような者から見れば、邪道だと受けとる者も少なからず居るらしい。
「素材は、まあ普通か?」
「そうだな。 そんなに高級な素材は使ってないな。 ただ質の悪い物もない。」
「ダシも顆粒じゃないな。 要所は押さえてるか。」
「味・見た目・値段のどれを取っても平均以上だ。 流行るはずだ。」
今回来た彼らもどちらかと言えば邪道だと見ている者達で、立体映像で客寄せをしてる段階でたいした料理は出してないだろうと舐めていた。
しかし実際に食べてみると表情が険しくなり、何とも言えない雰囲気になる。
「俺達だって、味は負けてないだろ?」
「味は負けてない。 ただ勝ってもない。」
プロの卵である彼らからすると、レベルは高いが自分達ならば負けてないと自負するが、逆に言えば勝ってもないと認めざるを得ない物だった。
今時はチェーン店だって美味しい料理を出している。
味だけで勝負したいとプライドを持っていたが、肝心の味で色物に勝てないのは問題だった。
「まあ、ここは特別だよ。 超包子とマホラカフェのマスターが全面協力してるし。 俺達が予選落ちした去年の料理大会の優勝者が三人も居るんだからな。」
「ああ、あの女癖の悪いってマスターね。」
「その噂はガセっぽいよ。 あの店、女子に人気だし。 捨てられたとか遊ばれたって人、実際に居ないし。」
「っていうか、そのマスターはパティシエだろ?」
「それもガセ。 喫茶店だからスイーツとか多いらしいけど、和食とか洋食まで何でも作れるらしい。 土日とかだと時々凄い手の込んだ美味い料理出すぞ。」
「それにしては料理が色物じゃねえ?」
「そういう人なんだよ。 ジャンクフードからちゃんとした料理まで何でも作るし、気取った料理よりは、みんなで楽しみながら食べる料理を好む人だからな。」
たかが中学生の女の子達の出し物にも勝てないのかという、少し重苦しい空気が広がるが、一人の男子は事情通というか横島の店の常連らしく仕方ないと語る。
料理に対する固定観念や変なプライドはなく、自由気ままな料理を好む横島を未熟な学生達では、まだ理解できないらしい。
「あっ! おにいさん、こんにちは!」
「タマちゃん、お店大人気で良かったね。」
「うん! みんながよろこんでくれるの!」
戦う前から敗北感を感じる男達だが、店の常連を見つけたタマモが挨拶に来ると、お客さんが喜ぶことが嬉しそうなタマモに、彼らは自分達がお客さんのことを本当に考えていたのかと考えさせられることになる。
実際の評価もいいのだが、前評判がよく新規のお客さんが続々と来るので、混雑は当分減りそうもなかった。
「米が意外に美味いな。 炊き方がいいんだろうか。」
「ああ、美味い。」
そんなこの日店舗を訪れて食事をしていたのは、高等部調理科の三年の男子数名である。
彼らは高等部調理科の校舎で本番の三日間はレストランを営業する予定らしく、この日は話題の店の視察に来ていた。
本格的な料理人や料理人を目指す学生からは、実は3ーAの店は少し色物として見られている。
料理一本で勝負する彼らのような者から見れば、邪道だと受けとる者も少なからず居るらしい。
「素材は、まあ普通か?」
「そうだな。 そんなに高級な素材は使ってないな。 ただ質の悪い物もない。」
「ダシも顆粒じゃないな。 要所は押さえてるか。」
「味・見た目・値段のどれを取っても平均以上だ。 流行るはずだ。」
今回来た彼らもどちらかと言えば邪道だと見ている者達で、立体映像で客寄せをしてる段階でたいした料理は出してないだろうと舐めていた。
しかし実際に食べてみると表情が険しくなり、何とも言えない雰囲気になる。
「俺達だって、味は負けてないだろ?」
「味は負けてない。 ただ勝ってもない。」
プロの卵である彼らからすると、レベルは高いが自分達ならば負けてないと自負するが、逆に言えば勝ってもないと認めざるを得ない物だった。
今時はチェーン店だって美味しい料理を出している。
味だけで勝負したいとプライドを持っていたが、肝心の味で色物に勝てないのは問題だった。
「まあ、ここは特別だよ。 超包子とマホラカフェのマスターが全面協力してるし。 俺達が予選落ちした去年の料理大会の優勝者が三人も居るんだからな。」
「ああ、あの女癖の悪いってマスターね。」
「その噂はガセっぽいよ。 あの店、女子に人気だし。 捨てられたとか遊ばれたって人、実際に居ないし。」
「っていうか、そのマスターはパティシエだろ?」
「それもガセ。 喫茶店だからスイーツとか多いらしいけど、和食とか洋食まで何でも作れるらしい。 土日とかだと時々凄い手の込んだ美味い料理出すぞ。」
「それにしては料理が色物じゃねえ?」
「そういう人なんだよ。 ジャンクフードからちゃんとした料理まで何でも作るし、気取った料理よりは、みんなで楽しみながら食べる料理を好む人だからな。」
たかが中学生の女の子達の出し物にも勝てないのかという、少し重苦しい空気が広がるが、一人の男子は事情通というか横島の店の常連らしく仕方ないと語る。
料理に対する固定観念や変なプライドはなく、自由気ままな料理を好む横島を未熟な学生達では、まだ理解できないらしい。
「あっ! おにいさん、こんにちは!」
「タマちゃん、お店大人気で良かったね。」
「うん! みんながよろこんでくれるの!」
戦う前から敗北感を感じる男達だが、店の常連を見つけたタマモが挨拶に来ると、お客さんが喜ぶことが嬉しそうなタマモに、彼らは自分達がお客さんのことを本当に考えていたのかと考えさせられることになる。