二年目の春・8

そして同じ日の魔法世界では歴史的な騒動になっていた。

いよいよクルト一派のクーデター計画が世間に露見したのだ。

メガロメセンブリアの検察当局は、特別チームを結成して本件の極秘捜査に当たっていて、この一件は高度に政治的な判断が必要なだけに箝口令を敷いて対応していた。

そんな中、メガロメセンブリアのゴシップ紙がこの件を嗅ぎ付け中途半端な記事を掲載してしまったことがきっかけで、他のメディアも追従してしまい事態は急速に動き出してしまう。


「全く。 あの連中は。」

「明日には関係各所に強制捜査が入るようです。」

悠久の風のエレーヌ・ルボーンは、苦労に苦労を重ねてクルトの一件の落とし所を探していただけに、その苦労をあと少しのところで半ば無駄にしたマスコミに苛立ちを隠せないでいる。

報道の自由を都合よく解釈して、自分達のルールで好き勝手な報道をするのはメガロメセンブリアでも同じであった。


「仕方ないね。 どのみちクルト坊やと馬鹿どもは、責任取らさなきゃだめだったんだし。 末端はよく知らぬまま協力していたことで不起訴処分が妥当かね。」

「問題が一つ。 ゲーデル議員が姿を消しました。」

「探しな! 今更一人で逃げるなんて許さないよ!」

ただまあ、あまり深く知らずに計画に協力していた者の対処はほぼ決まっていて、あとはクルトや計画中枢のメンバー扱いが主だった。

エレーヌはそこまで面倒を見きれないし、自業自得だと割り切ったが、ここでクルトが姿を消したという情報がもたらされると、心底疲れた表情ですぐに指示を出す。


「凄まじい執念ですね。」

「感心してる場合じゃないよ。 全く。 旧世界の連中にも知らせな。 特にタカミチには、あの馬鹿が接触しに行くかもしれないからね!」

「麻帆良は麻帆良祭の時期です。 ゲーデル議員がタカミチ君に接触しに行くには絶好の機会でしょう。」

「当局は?」

「行方を追っています。 今日か明日で見つからなければ指名手配をすると。」

最早クルトの再起の可能性は限りなくゼロに近い。

本人もそれを理解して逃亡したのだろうが、責任も取らずに逃げたその執念にエレーヌも腹心のセドリックも、呆れていいやら感心していいやら複雑な気分だった。

何をしでかすか分からないだけに、早く捕らえたいのがエレーヌ達やメガロメセンブリア上層部の総意なのだが、戦闘力もありメガロメセンブリアの内部を熟知してるだけに、早期に見つかるかは微妙なところである。

某歴史では自らの計画の為に無実のネギ・スプリングフィールドと少女達を指名手配したのもクルトであるし、それを利用してネギを自らの手駒にしようとしたのも彼になる。

そんな彼がこの世界では指名手配されることに、全てを知る者は歴史の皮肉を感じるかもしれないが、残念ながら二人がそれを知るはずもない。

本来ならば超鈴音が暴れるはずの麻帆良祭の直前にクルトの逃亡が起きたのは、歴史とこの世界の微妙な繋がりが原因かもしれない。


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