二年目の春・8

「A組は相変わらずよね。」

同じ頃、女子中等部の校舎では多くの少女達が麻帆良祭の準備に追われていた。

麻帆良祭まではこの日を入れて残り三日となり、追い込みの真っ最中だったが、静かで誰も居ない3ーAの教室に同じ三年の少女が少し羨ましげに呟く。


「いいわよね。 麻帆良祭の為に店を休んでまで手伝ってくれるんでしょ? 普通そこまでしないわよね。」

「あんたの彼氏は?」

「ダメダメ。 自分のクラスとサークルで忙しいって。」

「モテる秘訣なんでしょうね。 一緒になって全力で楽しむとこ。」

中等部では学校外で出し物をするクラスはほとんどなく、他は教室か体育館に校庭など学校の施設を使った出し物が多い。

必然的に外部からの協力者もあまりないクラスが多く、3ーAの状況を羨む者も多かった。

3ーAの状況は少し特殊だが、何より目立つのは自分の店を休んでまで参加してる横島だった。

中等部では横島の店の常連も多く親交がある少女達も少なくないが、やはり木乃香達は特別であり周りから見るとカップルと変わらないんじゃないかと見えている。

日頃からお客さんと一緒に騒ぎ楽しむ横島の姿は店の名物でもあるが、基本的に女性に甘く一緒に楽しむが故に、距離が近くなりがちな横島は当然ながらモテている。

まあ男は横島だけではないし、麻帆良学園では男子と知り合う機会も多いので彼氏が居る少女も珍しくないが。

横島のように女子中等部のクラスに混じって協力してくれるほどの男性はなかなか居なかった。

極論だがみんな忙しいし、女子中等部で社会人と付き合うのは流石に珍しい。


「タマちゃん大人気なんだってよ?」

「いいなぁ。 私達ももっと弾けたことしたいのに。」

「うちのクラス、先生真面目だし。 協調性ないのよね。」

少女達と横島の店が繁盛する傍らでは、担任の教師意向やクラスの意向により凝った出し物よりも、自由時間を確保したがるクラスもある。

ぶっちゃけるとそっちの方が楽だし遊べるので、それなりの出し物でお茶を濁すクラスも無いわけではない。

ちなみに話をしてる少女達のクラスの出し物は射的だった。

準備が楽なことや、当日の人が少なくてすむことで決まっている。

飲食関係と違い手間が掛からないことと、クラスに雑貨屋を営む少女が居て仕入れが楽な上に、景品が余っても雑貨屋で引き取ってくれるので、赤字にならないことから射的になっていた。

雑貨屋の友人には感謝してるし射的はいいのだが、もう少し弾けた演出などをして楽しみたいと考えてる少女も中には居るらしい。


「うーん。 マスターのこと誘惑してみる?」

「無理無理。 周りは可愛い子ばっかりじゃん。」

「アハハ。 そうだよね。 刀子先生まで居るし。」

なかなか上手くいかないなと話す少女達であるが、彼女達は彼女達で麻帆良祭を楽しんでいる。

まあ楽しみ方は人それぞれだった。

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