二年目の春・8

一方この日の厨房では、超包子の助っ人と少女達が混じった人員で働いていた。

少女達も半数は部活やサークルの準備に行ってることや、本番で助っ人として加入する超包子の面々も多少はやり方を覚える必要があった為でもある。


「ご飯炊けたよ!」

「焼けどしないようにな。」

厨房には今年は複数の業務用炊飯器があり、朝から閉店までご飯を炊き続けていた。

わんこひつまぶしは炊きたての熱々のご飯がよく、少女達が一番気を付けなければいけないのは火傷になる。

専用のカップにご飯を潰さぬように盛り、それを器にひっくり返すように入れると、具材や薬味を盛り付けてお客さんに提供する。

ほとんど流れ作業のように簡単作業であるが、働く方は結構大変であった。


「木乃香、マグロ追加お願い。」

「了解や。」

横島や木乃香は主に具材の調理をしていて、木乃香は海鮮具材を切る作業もしている。

お刺身などでもそうだが、切るにはそれなりの技術が必要なのだ。

綺麗な見た目はもちろんのこと、味にも影響するので流石に超鈴音や五月はともかく、他の少女には出来ない作業の一つになる。


「なんか外が賑やかね。またタマちゃんの撮影会でもしてるのかしら?」

「一緒に居るの桜子だからね。ちょっと心配。」

店内は常に満員だが、見た目ほど混雑もしてなければ問題はほとんど起きてない。

ただ前日なんかは馴染みの女子高生に促されて、タマモの臨時の撮影会を行列に並ぶ人達がやったりと、ちょっと予定外の騒ぎが起きることもあった。

不思議と騒動にまではならないからいいのだが、基本的に自由人なタマモと桜子のコンビはちょっと心配になる少女達も居るらしい。


「わーい! ゆきひろのおじいちゃんだ!」

「おじちゃん!? 雪広家の隠し子!?」

「いや、違うの。 タマモちゃんは親しい年寄りはよくおじちゃんと呼んどるぞ。」

ちなみに騒がしいと言っていたこの時、雪広グループ会長の雪広清十郎が行列に並び始めており、タマモがいつものように嬉しそうに駆け寄ると清十郎はまるで本当の孫のように抱き上げたので、一瞬勘違いをしかけた者も居た。

しかし行列にはタマモと親しい他の年配者や学生も居て、元々人懐っこい子供なんだと笑って否定している。

ちょっとしたスキャンダルになりかけたが、タマモの人懐っこい性格を知る者はいつものことだと笑っていた。


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