二年目の春・8

「わっ! わっ! わっ!」

そのまま横島と木乃香とタマモは混雑を避けながら、大学部のサークルの出し物や出店を見ていた。

遊園地のアトラクション顔負けの物もあれば、アイデアで勝負した隙間産業のようなアトラクションや出し物もある。

タマモは初めて見るそれらを、瞳を輝かせながら目一杯楽しんでいた。


「マスターだポー」

「マスター! 食べていって欲しいポー」

そんな中で横島達が立ち寄ったのは、行列が出来てるたこ焼きだった。

正確には変わり種たこ焼きと言うべきか。

カレー味やピザソース味などの味から、おろしぽん酢味まで十種類近くある。


「へぇ。 変わり種たこ焼きか」

屋台を運営していたのは白人風の二体のハニワだが、大声で横島を呼ぶもんだかは注目を集めてしまう。

ただし幸か不幸か横島の麻帆良でのアダ名もマスターなので、全く意味は違うが問題にはならなかったが。


「一番人気はロシアンたこ焼きなん?」

「そうポー。 一つだけ激辛たこ焼きがあるポー。」

ハニワ兵のたこ焼き屋さんはいろいろ人気のようだが、一番人気と書かれていたのはロシアンたこ焼きだった。

いわゆる中味は様々な味の物があり、一つだけ激辛たこ焼きがあるというパーティなどで定番の商品だ。


「これがいい!」

「でもタマちゃん。 辛いのあるえ?」

「だいじょうぶだよ!」

タマモはクンクンと匂いを嗅ぎながら、メニューにあるどれにしようかと迷うが、いろんな味を楽しめるからとロシアンたこ焼きを選ぶと木乃香は少し心配そうな表情に変わる。

実はタマモは妖怪故に嗅覚や味覚が鋭く、お子さま故に辛いものなど刺激物は苦手であった。


「大丈夫ポー! 子供向けのロシアンたこ焼きもあるポー!」

ただハニワ兵も学園祭に出店するということで、ちゃんと子供向けの対策をしたメニューも用意していた。

辛さをだいぶ押さえた物があるらしい。

横島達は結局それを購入して、近くの休憩所のベンチに座り冷めないうちに食べることにする。


「外はカリッとして美味いな」

「うん! おいしい!」

横島と木乃香の間に座ったタマモは、小さな口で頬張るには少し大きめのたこ焼きをふうふうしながら頬張ると、まだ熱かったのか口の中でハフハフしつつ食べていた。

カリッとした外側の生地の中には、トロッとした食感の具やソースが入っていて美味しい。


「ほら、衣装を汚したらあかんえ」

口元を汚しながら満足げに食べるタマモの口元を、木乃香は笑顔で拭いてやるが、横島はそんな木乃香の姿に去年のことを思い出したようで辺りを見渡すも、今年は写真を撮っている人は居なくホッとする。

客観的に見て自分達三人はどう見えるのだろうかと少し考えてしまう横島であるが、楽しげな二人の笑顔にどう見られてもいいかと思う。

ちなみに端から見ると子連れのデートに見えるらしく、いろいろあって有名な三人だけに、やはり横島と木乃香は付き合っているのだという噂が再び広がることになる。

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