二年目の春・8

「高畑先生。すまないが西門に行ってくませんか? タチの悪そうな輩が居るんですよ。」

「ええ。すぐに行きます。」

一方高畑はクラスの出し物よりも、広域指導員と魔法協会員としての仕事が忙しかった。

荒事専門とまでは言わないが、トラブル対処に手慣れている高畑には裏と表の双方からSOSが来る。


「君たち。 ここで何してるのかな?」

「あっ!? 」

「うっせえよ。 おっさん。 てめえには関係ねえ。」

特に十代後半から二十代前半くらいの学園の生徒でない者は、タチの悪い連中も少なくない。

祭りと言うことで羽目を外したり、自分達の町でないことをいいことに恥をかき捨てして構わないと、身勝手な輩は毎年一定数存在する。

特に女子中等部近辺はナンパ目的の輩の出没ポイントの一つで、教師陣は対応に苦慮していた。


「そっちにはなくても、こっちにはある。 うちの生徒が君たちを嫌がっていてね。」

「なんだと! 殺すぞこら!」

「ここは公共の道路だぞ!」

「残念だが、ここは麻帆良学園の私道で私有地だ。 大人しく帰るなら見逃すつもりだったけど、君たちは警察に渡した方がいいみたいだね。」

相手が一般人故に手荒なことは出来ないが、タチの悪い連中は捕らえて不法侵入で警察に渡すことにしている。

ちなみに学園とその周囲には高性能な防犯カメラもあるので、彼らと高畑のやり取りは全て記録されていて警察にも提出していた。

正直なところきりがないし、中には何も悪いことをしてないと警察で逆ギレする者もいる。

ただまあ悪質な者への対処は何処も似たようなもので、警察で厳重注意か不法侵入で逮捕かのどちらかになる。

ほとんど見てないし地元の人ですら知らない人も居る事実であるが、麻帆良市の境界線には『これより私有地です』という注意書きが目立たないがあった。

流石に国道などは違うが路地を一本入れば道路も私道だし、特に学園の校舎回りには再び私有道路の看板もある。


「ちょっと待てよ。 オレ達は友達を待ってただけだぜ!」

「それじゃ、その友達を教えてくれないか? 確認が取れたら解放するよ。」

「いや、その……」

「勘弁してくれよ。 オレ達は来年受験なんだ。」

さてタチの悪い輩は警察が来ると途端に弱気になり、先程と態度が変わるが証拠の映像もあり警察に連行されることになる。

彼らに関しては意外にも都内の偏差値の高い高校生で普段は真面目な生徒だったようだが、麻帆良祭の直前なら麻帆良はナンパが成功しやすいという噂があるようで、それを聞き付けて来たらしい。

ちなみに少し酒を飲んでいたようで酒臭かったこともあり、学校と親に知らせて厳重注意されることになる。

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