二年目の春・8

「凄い大きな木だぽー」

同じ頃麻帆良にやって来た五人ほどの集団は、街の外れからでも見渡せるような大きな木に感動の声をあげていた。

ちょっと周りから浮いてる雰囲気のある彼らは、外国人のような容姿で全員旅行鞄のような荷物を持っている。


「観光は後だぽー。」

「手続きをしてお店やるぽー。」

変な語尾をつける彼らに周りに居た麻帆良の学生は何処の国の人だと首を傾げていたが、彼らは麻帆良祭参加の為に来たのであり、屋台の出店許可を貰うために麻帆良祭実行委員会の事務局に向かう。


「ようこそ。 麻帆良学園へ。」

「麻帆良祭にお店を出しに来たぽー。」

「申し訳ありません。麻帆良祭の出店の受付はすでに終了してまして……」

「申請はしたぽー。」

「ああ、手続きの方でしたか。 申し訳ありませんでした。 みなさんの場所はここになりますね。分かりますか?」

麻帆良祭実行委員会の事務局は、学園の事務局の建物の中にあった。

中では学生や大人が入り乱れて忙しく働いていて、彼らは受付窓口に並び出店をやる手続きを始める。

麻帆良は基本的に市内全てが学園の私有地であり、公園や空き地も学園所有の土地になるので、出店を開く場合には学園の許可と行政の許可の双方が必要になる。

彼らの出店の出店場所は女子中等部のある地区の、大通りから少し外れた空き地だった。

企業の出店はそれなりのスペースが必要なのと、支援企業は麻帆良学園のスポンサーと言えるので、優先的に出店場所を選べるが。

一般参加の場所は抽選により選ばれる。

残念ながら彼らはあまりいい場所ではなかったらしい。


「準備するぽー!」

「やるぽー!」

「荷物はマスターの家に届いてるはずぽー!」

周囲には女子中等部の運動部の倉庫や部室があり、校庭も目の前に見えるのでいい場所とは言えないが悪い場所でもない。

自分達の出店場所に喜ぶ彼らは、手分けして開店準備に取り掛かる。


「お前達は……。」

「魔王様だぽー!」

「一緒に飲み比べしたぽー!」

「ああ、ハニワ兵か。」

彼らの出店に使う資材は横島の家に送られるので、数人で取りに行くとめんどくさそうに現れたのは、横島宅で暇潰しにテレビゲームをしているアナスタシアだった。

魔王様だと喜ぶ彼らにアナスタシアはすぐに正体に気付いたらしいが、どうやら彼らは以前にアナスタシアと飲み比べしたハニワ兵達らしい。


「お店やるぽー。」

「魔王様も来て欲しいぽー。」

「別に構わんが。 その魔王様というのは外で言うなよ。」

「了解ぽー!」

「姐さんにするぽー!」

そう言えば異空間アジトから届いてる荷物があったなと彼らを中に入れるアナスタシアに、ハニワ兵達は自分達の店の話などするが。

アナスタシアはいつの間にか姐さんと呼ばれるようになってしまい、少し微妙な表情を見せる。

ハニワ兵達はアナスタシアが来るのを楽しみにしながら届いてる荷物を持ち横島宅を後にするが、アナスタシアはハニワ兵達を自由にして大丈夫なのか不安を感じたのは言うまでもない。


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