二年目の春・8

お昼を過ぎると行列は幾分減ったが、午後3時頃を過ぎると今度は中等部や高等部などの学生達が並び始めた。

仮設店舗があるのが大学部の敷地なのは以前に説明したが、基本的に大学部の出し物などは早いところでは一月ほど前から営業している。

一週間前になると祭り当日と変わらぬ出し物にアトラクションなどが営業していて、当日忙しい学生達がこの時期に祭り見物や遊びに来るのは毎年あることだった。


「タマちゃん、可愛い!!」

「こっち向いて!」

そして学生達が並び忙しくなると、タマモは狐耳と尻尾を揺らしながら精力的に働くが、相変わらず写真を撮られている。

女子中高生は比較的仲良しな人が多いので、声をかけてカメラ目線でブイサインや魔法少女のアニメのようなポーズを極めるサービス付きだ。


「失敗したわ!」

「何を失敗したのですか?」

「タマちゃんのサイン入りブロマイドも売るべきだったわ!」

「タマちゃんを金儲けの道具にしないでください」

そんなタマモのおかげか行列が出来てるにも関わらず、並ぶ人も3ーAの少女達もあまりピリピリしたり、焦ったりすることなく営業を続けている。

ハルナなんかは、もっとタマモを全面に押し出した商売にすべきかと悔しがっているが。


「絵本、結構売れてるわね。」

「当然よ!」

なおハルナの独断で販売までこぎ着けた、タマモの店のイメージを絵本化した物だが、結構売れていた。

正直なところ本当に売れるのか半信半疑の少女達も多かったが、パラパラと捲って買っていく人が多い。

この才能と情熱をほんの僅かでも勉強に向けたらと、あやかなどは密かに思っていたが。


「ご飯炊けたよ!」

「あれ? マグロ解凍したの少ないじゃん!」

「あー、それあっちで解凍してる。」

店の方は多少ドタバタしていたが、あくまでもここは学生による模擬店なのだ。

お客さんも学生か地元の人達なので、多少のトラブルで怒る人など居ない。

去年の経験から可能な限りマニュアル化したが、扱うのはやはり少女達なので慣れるまでは間違いや勘違いはある。

ただまあ、そういう部分も含めて麻帆良祭の醍醐味であり、営業する側もお客さんの側も麻帆良祭らしさを楽しんでいた。

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