二年目の春・8

「おい! 中等部の店、凄い人気だぞ!!」

「マジか。」

「今年は注目されてたからな。最初は人が集まるだろ。」

一方、大学部を中心とした麻帆良祭の出し物やイベントの順位の優勝を狙う者達は、3ーAの店を注目していた。

去年とて超鈴音の存在から全くのノーマークではなかったが、今年はやはり注目の度合いが違う。


「午前中で五百人オーバーか。」

「回転率は良くないんだが、持ち帰りがあるからな。しかもそれ店内を見るだけの客は入れてない。」

「本当は飲食系で優勝は厳しいんだがな。」

今朝から張り付いて来店者数を計測してるサークルもあったようで、午前中の人数や頼むメニューの大まかなデータを早くもサークルに持ち帰り検討している。

注目されているとはいえ、平日の午前中に二時間で五百人は驚異であった。

しかもそれは何かしらの飲食物を買ったお客さんだけであり、買わないで立体映像を立ち見した人はカウントしてない。

本来の麻帆良祭においては、実は投票してもらうお客さんにいかに来てもらうかが順位争いには重要になる。

その点で言えば飲食系よりはアトラクション系やイベント系の方が有利な傾向があり、調理に時間がかかる飲食系で総合優勝したのは、過去に二度ほどしかなく去年のA組の出し物が三例目になる。


「揚げパンかぁ。美味いじゃないか。」

「一口サイズだから食べやすいし、アレンジがしやすい。麻帆良祭にピッタリだな。」

「こう、有りそうで無かった物だな。」

「あそこは麻帆良カフェのマスターが居るからな。麻帆良カフェのマスターって、本格的な物からジャンクフードまで普通に作るんだ。」

料理についても彼らは購入して食べて評価分析するが、彼らが特に食いついたのは一口揚げパンの方だった。

ある意味文化祭やお祭りに向いたメニューであり、味も親しみがあるし軽く食べれて美味しい。

わんこひつまぶしも無論美味しく評価しているが、有りそうでなかった一口揚げパンには、今年も侮れないと強く感じるようである。

一般的にわんこひつまぶしは軽食になるが、一口揚げパンはおやつになり、歩きながらでも食べられるし、その分販売個数が伸びるのが予想される。


「雪広グループの方で揚げる前の一口パン売ってたぞ。」

「世界的な発明家に一流の料理人とグローバル企業のバックアップって、反則な気がする。」

「超鈴音は中学生だしな。雪広グループはうちのアトラクションでも協力してくれてるよ。マスターは姫達と親しいし。誰が本当の彼女か知らんが、自分の彼女の手伝いして文句言われるのはおかしいだろ。」

「完全に儲けより順位狙いに来てるじゃないか。」

「そりゃ、狙うだろ。連覇なんて過去にはないんだから。しかもあの子達は学校のクラスのグループなんだ。今年が最後なんだよ。狙わないで何するんだよ。」

客観的に見て3ーAは収益より麻帆良祭の出し物の順位狙いなのは明らかで、そもそも麻帆良祭の商業化による拡大して以降に始まった学園全体での出し物の順位で連覇した者は居ない。

過去二十年において前年の優勝グループは連覇に挑むが、成しえた者は誰も居ないのだ。

実際3ーAの中はドタバタでなんとか形にしたのだが、周りから見ると周到な準備をしたように見えてしまう。

まあ元々3ーAは今年の優勝候補の一角でもあるので、順当な滑り出しだとも言えるが。

ともかく麻帆良祭の順位争いは、始まる前から激化することになる。



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