二年目の春・8

開店から二時間程になるとお昼時となる。

行列は一時的に減りはしたが、途絶えぬままお昼時を迎えた結果、再び増えていた。

こればっかりは店の対応能力的に、これ以上早くするのは無理でありどうしようもない。

ただこうなってくると持ち帰りと、隣接する雪広グループの物品販売ブースで売っているお弁当が飛ぶように売れていく。

当初二百用意した弁当は、早くも百個の追加製造に取り掛かってるらしい。


「あれ、薬味は?」

「追加お待たせ!」

「焦らんでいいからな。」

一方の少女達の方だが、こちらは店外に並ぶ行列にどうしても焦りそうになる少女達を、横島は落ち着かせつつ調理をしている。

スピーディーな作業を心掛けるのは必要だが、焦りは逆に失敗やミスに繋がるし、少女達の精神的にも余裕がないとこの先もたないだろう。

ただ全体としての混乱やミスはあまりなく、店自体は一定のペースで営業出来ていた。


「いらっしゃいませ! おもちかえりはこちらです!」

そしてタマモはあやかや桜子と一緒に、行列に並ぶ人への説明や案内に店内のテーブルの清掃などをしている。

基本的にはセルフサービスの店であるが、ちょっと溢したり汚したりはするし、行列の整理にも人は必要だった。

ちなみにタマモは狐耳をつけて、不思議の国のアリスのような服装をしている。

少女達もそうだが、全体的に露出を減らしてメルヘンを全面に押し出した健全なコスプレになっていた。

当然ながらタマモは、携帯電話で写真を撮られまくっているが。


「すげえな。」

「超鈴音得意の立体映像かぁ」

「馬鹿。立体映像以外だよ」

「以外って?」

「壁とかテーブルとか、本当よく出来てるよ。準備期間短い割によくやるよ」

行列が長くなれば避ける人も多いが、逆に並ぶ人も居る。

そして麻帆良祭の出し物やイベントの順位で、上位を狙うサークルなどは偵察に来ていた。

彼らがまず驚いたのは超鈴音の立体映像だが、それはまだ去年もあったもので想定内になる。

だが今年は立体映像の使い方が去年を上回り、外壁や内装などと上手く融合した物になっているのは想定以上だと言えよう。


「お客の回転率次第で連覇されるぞ!」

「子供使うので反則だよな。」

「あの子は元々ああいう子なんだよ。」

正直なところ美味しい料理を提供する屋台なら他にもあるし、面白い出し物も他にもある。

それらの異なる物を組み合わせて一つに纏めた物は、やはり今年も驚異だと見られていた。

それとタマモが全面に出ているので、年配者などにもアピール出来るのは、意外に大学部のサークルにはない物になる。


「これ来年は世代を広げたコラボ流行るかもな。」

3ーAの側はそこまで狙った訳ではないが、横島からタマモまで全く年齢も立場も違った者達の協力は周りから見ると驚異に見えていた。

少なくとも昨年の覇者という名誉を汚すことなく、今年も出し物を始められたのは確かだった。


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