二年目の春・8

さて緊迫する魔法世界と対照的に、麻帆良は平和そのもので祭直前の賑わいで活気に満ちていた。

「貴方達。 それ大丈夫なんでしょうね?」

「大丈夫ですよ。 安全審査は通しましたから。」

「事故だけは気を付けてちょうだいね。」

そんな麻帆良だがこの時期に一番忙しいのは裏と表双方で忙しい魔法教師であり、刀子は今年も忙しかった。

麻帆良学園の場合はテーマパークにでもありそうな大型アトラクションから、中小の様々なアトラクションやイベントなんかもあり一番怖いのは事故になる。

麻帆良祭実行委員会ではアトラクションや飲食店など、教師陣と協力しながら独自に安全審査を行い期間内の営業免許を交付する手続きを取っていた。

ただまあ審査のあとにあれこれと手を加えたり、不具合が出て改良するなんて日常茶飯事であり教師陣はとにかく気を抜けないのが現状になる。


「ちょっと! それはダメよ! すぐに直しなさい!!」

この日刀子はシャークティと共にあちこち見回りをしていたが、悪のりしたりルールを守らぬ生徒達にはキツく注意することも必要なことだった。

二人は実行委員会や他の教師陣と連絡を取りながら、時には怒ることすらあるが、二度三度と繰り返すと怒る方が疲れるのが本音である。


「全くもう……」

「少し休んで行きましょうか」

二十代も半ばを過ぎた二人は年齢的には生徒達とそう離れてないのだが、立場の違いは明らかで注意することに疲れた二人は近くの公園のベンチで休憩することにした。


「若いっていいわね。 本当羨ましいわ。」

二人が休憩する公園も麻帆良祭の準備をする学生で賑やかなようで、刀子は自分にはもう目の前の学生達のような若さはないなと改めて感じ少し羨ましいようだった。

木乃香達と居ても感じない訳ではないが、年齢の差というのは肉体的な老化を止めても、埋まらない差があるのかもしれないと最近は感じるらしい。


「刀子。 貴女そんなこと言ってると婚期逃がすわよ。」

「結婚は当分する気ないわ。」

「あのマスターも悪い人じゃないんだけど。 そういう面だと困った人よね。」

ただシャークティは若い学生を羨む刀子に、横島との微妙な関係を思い出したのか苦言を口にするも、刀子は笑って受け流すだけだった。

刀子はシャークティに横島とは友人だと語るが、シャークティですら実は男女の関係ではと多少疑っている。

中途半端な交際が出来るタイプではないし、横島との関係で嘘をつく必要もないので多少疑っている程度であるが。

しかしそうなると好意を持つ男性と友人止まりで何もしてない刀子に、それはそれでいいのかと思わなくもない。

横島に対しても友人にするのか交際するのか、男ならはっきりしてやればいいのにとシャークティは呆れながらも思っていた。


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