二年目の春・8
一方魔法世界のメガロメセンブリアでは、詠春ショックとでも言うべき衝撃が広がっていた。
元赤き翼の名前で元老院議員となったクルトにとって、詠春の映像は大義名分どころか議員の地位さえ危ういところまで来ている。
そして今まで強引で違法スレスレの手法で活動してきた、クルトの問題点が次々と噴出してしまっている。
自称二十年来の友人や自称後援会幹部に自称事情通など、怪しげな人が次々と魔法世界のメディアに出ては、彼の今までのやり方や考え方を暴露していた。
中にはクルトこそ赤き翼の後継者であると、全てはクルトと赤き翼を貶める陰謀であると信じる者も少なからずいたが。
とはいえ今までの強引で違法スレスレか、違法でも力で文句をねじ伏せて来たクルトに味方するのは、事情を何も知らぬ者達であり、元老院では一部のクルトを利用して売名行為をしたい者が真相を確かめるべきだと主張する程度だった。
「これは参ったね。 誰の仕業だい。 クルト坊やじゃないだろ。」
「バナード議員ですね。 こんな事態を予想していたのかもしれません。」
そんな詠春ショックにクルトの元側近は自身が逮捕されるのを悟ったのか、とんでもない行動をして元老院ばかりか悠久の風のエレーヌを困惑させた。
「アリカ元女王の冤罪の記録まで集めていたとは……」
実は側近の一人が二十年前の真相とアリカの冤罪の証拠を集めて握っていると主張して、政治取引を元老院中枢に密かに要求したのだ。
「そんなもんがあるなら、公開すりゃいいじゃないのさ。 結局我が身が大事な俗物だったってことかね。」
「しかし、そんなことをすれば現在の秩序が崩壊します。」
「そのつもりだったんじゃないのかい? 連中はさ。」
クルト自身は相変わらず不気味なほど動きを見せてないが、一派として集めていた魔法世界の真相と、二十年前の真相が記されたメガロメセンブリア公式文書などの、確かな証拠を彼らは握っているらしい。
エレーヌはいっそのこと公開でもすれば、まだ評価したのかもしれないが、それを自己保身の為に使おうとしてる者達に呆れるしか出来なかった。
「テロリストにもなれなかった程度の連中とは、クルト坊やも大変だね。」
腹心のセドリックはそれらの秘密の開示には賛成ではないようだが、エレーヌはいっそ公開した方がいいのではと思ってる節もある。
メガロメセンブリアの地位と信頼は地に堕ちるが、魔法世界の限界はいずれ来る現実的な問題なのだ。
いっそのことメガロメセンブリアを潰してでも、魔法世界の問題に真剣に取り組む体制を構築したいと考えるなら、良し悪しは別にして必要なことにも思えるらしい。
「さて、上はどうするかねぇ。」
「応じるか、それとも……」
「連中は自分達が何で博打してるか、分かってないんだろうね。」
正直なところ平時ならば、それをネタに役職や出世を求めたら応じる可能性はあった。
ただ国家転覆を狙った者達を相手に、そんな取引に応じるとはエレーヌには思えなかった。
客観的に見て魔法世界の真相と二十年前の真相は人々に明かす時期なのかもしれないが、メガロメセンブリアの既得権を持つ者達は絶対に認めないだろう。
例え世界が明日滅ぶとしても。
殺してくれと言ってるようなものだと、エレーヌは言葉にはしないが思っている。
「うちを頼って来た連中に馬鹿な話に乗るなって、釘刺しときな。」
「それしかありませんね。」
破れかぶれの禁じ手を使った元クルト一派の側近達に、最早悠久の風が出来ることはない。
ぶっちゃけ同じ穴のムジナにされたら困るし、エレーヌには悠久の風のメンバーやその家族を守るという義務がある。
悠久の風を頼って来た元クルト一派が連中の馬鹿な行動に乗らないように説得しつつ、幹部連中の始末は元老院中枢に任せるしかなかった。
元赤き翼の名前で元老院議員となったクルトにとって、詠春の映像は大義名分どころか議員の地位さえ危ういところまで来ている。
そして今まで強引で違法スレスレの手法で活動してきた、クルトの問題点が次々と噴出してしまっている。
自称二十年来の友人や自称後援会幹部に自称事情通など、怪しげな人が次々と魔法世界のメディアに出ては、彼の今までのやり方や考え方を暴露していた。
中にはクルトこそ赤き翼の後継者であると、全てはクルトと赤き翼を貶める陰謀であると信じる者も少なからずいたが。
とはいえ今までの強引で違法スレスレか、違法でも力で文句をねじ伏せて来たクルトに味方するのは、事情を何も知らぬ者達であり、元老院では一部のクルトを利用して売名行為をしたい者が真相を確かめるべきだと主張する程度だった。
「これは参ったね。 誰の仕業だい。 クルト坊やじゃないだろ。」
「バナード議員ですね。 こんな事態を予想していたのかもしれません。」
そんな詠春ショックにクルトの元側近は自身が逮捕されるのを悟ったのか、とんでもない行動をして元老院ばかりか悠久の風のエレーヌを困惑させた。
「アリカ元女王の冤罪の記録まで集めていたとは……」
実は側近の一人が二十年前の真相とアリカの冤罪の証拠を集めて握っていると主張して、政治取引を元老院中枢に密かに要求したのだ。
「そんなもんがあるなら、公開すりゃいいじゃないのさ。 結局我が身が大事な俗物だったってことかね。」
「しかし、そんなことをすれば現在の秩序が崩壊します。」
「そのつもりだったんじゃないのかい? 連中はさ。」
クルト自身は相変わらず不気味なほど動きを見せてないが、一派として集めていた魔法世界の真相と、二十年前の真相が記されたメガロメセンブリア公式文書などの、確かな証拠を彼らは握っているらしい。
エレーヌはいっそのこと公開でもすれば、まだ評価したのかもしれないが、それを自己保身の為に使おうとしてる者達に呆れるしか出来なかった。
「テロリストにもなれなかった程度の連中とは、クルト坊やも大変だね。」
腹心のセドリックはそれらの秘密の開示には賛成ではないようだが、エレーヌはいっそ公開した方がいいのではと思ってる節もある。
メガロメセンブリアの地位と信頼は地に堕ちるが、魔法世界の限界はいずれ来る現実的な問題なのだ。
いっそのことメガロメセンブリアを潰してでも、魔法世界の問題に真剣に取り組む体制を構築したいと考えるなら、良し悪しは別にして必要なことにも思えるらしい。
「さて、上はどうするかねぇ。」
「応じるか、それとも……」
「連中は自分達が何で博打してるか、分かってないんだろうね。」
正直なところ平時ならば、それをネタに役職や出世を求めたら応じる可能性はあった。
ただ国家転覆を狙った者達を相手に、そんな取引に応じるとはエレーヌには思えなかった。
客観的に見て魔法世界の真相と二十年前の真相は人々に明かす時期なのかもしれないが、メガロメセンブリアの既得権を持つ者達は絶対に認めないだろう。
例え世界が明日滅ぶとしても。
殺してくれと言ってるようなものだと、エレーヌは言葉にはしないが思っている。
「うちを頼って来た連中に馬鹿な話に乗るなって、釘刺しときな。」
「それしかありませんね。」
破れかぶれの禁じ手を使った元クルト一派の側近達に、最早悠久の風が出来ることはない。
ぶっちゃけ同じ穴のムジナにされたら困るし、エレーヌには悠久の風のメンバーやその家族を守るという義務がある。
悠久の風を頼って来た元クルト一派が連中の馬鹿な行動に乗らないように説得しつつ、幹部連中の始末は元老院中枢に任せるしかなかった。