二年目の春・8

翌日も横島と少女達は朝から仮設店舗の準備をしていた。

大学部近辺は一年前から準備をしているサークルなどのイベントやアトラクションが多く、すでに事実上の祭り期間となっている。

中には横島や少女達が準備する様子を見物に来るほどであり、そんな中で準備は進められていた。


「外装は昼までには終わるな。 足場の後片付けを考えるとギリギリかなぁ。」

仮設店舗自体は外装はほぼ完成しているが、昼までには仕上げて足場の解体を含めると一日仕事となる。

一方内装の方は後回しにした結果、超鈴音を中心に頑張っているがこちらの遅れが一番深刻だった。

椅子に被せるメルヘンのカバーやテーブルの装飾は、同じく今日一日でなんとか間に合いそうなのだが。

正直立体映像を含めた最終テストを考えると、徹夜とは言わないが夕方までに終えるのはほぼ不可能となる。

まあどんな店にするか迷走したし、準備してる最中もふざけたりしていたので、間に合うだけマシなのだろうが。


「タマちゃん、朝から元気やな~。」

「昨日は家に帰ったら、すぐ寝ちゃったんですけどね。」

昨日も遅くまで作業していたので少女達も多少お疲れの様子であるが、タマモは一晩寝たら元気になったらしく、朝からはしゃいだりしつつお手伝いをしていた。

普段は周りの大人から人一倍元気なクラスだと見られてる少女達も、まだ幼いタマモの元気には流石に叶わないらしい。


「そこは違うネ。 こうするといいよ。」

一方一番作業が遅れてる内装は超鈴音を中心に頑張っていた。

史実と違い計画も潰れ暇になったこともあり、クラスの出し物に集中して取り組んでいる。

ちなみに超鈴音は近右衛門よりマホネットの使用を認められていて、最近のメガロメセンブリアの騒ぎを多少なりとも知り驚いていたが。

彼女の扱いは相変わらず要注意人物として高畑の監視下に置かれているが、あまり締め付けてばかりも良くないということで、 魔法に関わるならルールを守るように指導している最中だった。

そんな彼女からすると高畑がクルト・ゲーデルと距離を置いたのも驚きならば、詠春がクルト・ゲーデルを突き放したのも驚きだった。

クルト・ゲーデルは本来ならば良くも悪くも赤き翼やネギとの関係を背景に権力を持ち、魔法世界が崩壊した彼女の未来においても賛否が分かれる人物なのだ。

そもそもクルト・ゲーデルの立場は超鈴音の歴史より悪く、彼の歴史に残る結果から何か企んでることに気づいている。

詠春の映像も十中八九は近右衛門が何かそれに対抗する手段として用いたのだろうと、現状をほぼ正確に掴んでいた。

最早現状で動こうとは思えなくなっていて、何かしようという考えはない。

ただ本来の歴史とあまりにも違うこの世界が何処に向かうのか、野心を失った超鈴音は純粋な好奇心からその結末を静かに見守ることになる。

40/100ページ
スキ