二年目の春・8

横島達が自宅に戻ったのは深夜に近い時間だった。

タマモはお風呂が湧くのを待ってる間に眠ってしまい、完全に熟睡してしまい起きる気配はない。

いつもと違いお昼寝もしてないので、当然の結果と言えばそうなのだが。

みんなと一緒に楽しく騒いでいるうちは良かったが、家に着いてホッとしたのだろう。


「こりゃ、明日徹夜してもタマモは寝ちまうな。」

「まだ子供ですからね。」

横島の寝室のベットにタマモを寝かせて布団をかけてやると、タマモは満足げな笑みを浮かべて眠っている。

明日はみんなと一緒に徹夜するんだと張り切っていたタマモだが、やはり妖怪とはいえ幼い体では睡眠が必要らしい。

外で寝るのは時期的にもまだ寒いので明日はどうしようかと悩む横島であるが、人一倍楽しみにしてる徹夜を止めろと言っても聞かないだろう。

困ったなと苦笑いしながら、タマモの寝顔を見守る横島であった。



「あんた達。 麻帆良祭の計画は?」

「麻帆良祭ですか? 私はクラスの店と部活の活動に、納涼祭と麻帆良カレーのイベントで忙しいです。」

「私も……」

「甘いわ! 最近弛んでるんじゃないの!?」

一方女子寮の夕映・のどか・ハルナの部屋では、ハルナが夕映とのどかに突如怒り出していた。

夕映とのどかは麻帆良祭の期間中は結構忙しい。

それは前々からハルナも知っていたはずなはのだが。

「恋愛には適度な緊張感が必要なのよ! あんた達その年で所帯染みてどうするの!?」

「別に所帯染みてはないと思うのですが?」

「うん。 そうだよね。」

世間一般的に麻帆良祭は麻帆良で一番大きなイベントであり、若い学生達は色恋沙汰に騒ぐ期間でもある。

急造カップルが増える時期でもあるし、そこまで行かなくても麻帆良祭を異性と一緒に見て回ろうとする者達は多い。

実際夕映達も去年はそんなこともしたが、今年は横島のスケジュールを押さえたことや忙しさからそんな話はしてなかった。


「女が所帯染みると、男は浮気するのよ!」

「そんな昼ドラみたいな……」

「そもそも私達は正式には、横島さんと付き合ってる訳では……」

どうもハルナは妙に落ち着いてしまった夕映とのどかが、お気に召さないらしい。


「中学最後な麻帆良祭なんだから、ガツンと想い出に残る既成事実を作るくらいしなさい!」

「そういう策略染みた展開、横島さん嫌がりますよ」

まあ夕映とのどかもハルナの言いたいことは理解するが、せっかく上手くいってる関係に余計な波風を立てるのを二人は望まなかった。

ただでさえリアルにハーレム状態となり、ややこしくなっているのだから、一歩間違えれば修羅場になりかねないのは考えなくても分かる。

しかしまあ、既成事実とまではいかなくても想い出は欲しいのが二人の本音でもある。

横島にあまりその手の女心を理解して欲しいと期待するのは無駄だと知りつつも、心の中では少し期待してる部分もあった。

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