二年目の春・8

「本当に木みたいになったわね。」

さてこの日の夕方には外装が表半分出来ていた。

外装は木材や発泡スチロールで世界樹のようにしただけだが、四角い店舗を丸くするのは意外に大変で、横島が高畑や茶々丸や明日菜などと作業をしてもまだ終わってない。


「なんとか間に合うかなぁ。」

「なんというか、完全に建築現場みたいですね。」

電導の工具や業務用の工具などを借りてきて建てているし、足場まで使ってるので本当に見た目は建築現場そのものだった。

横島もそこまで手が込んだことはしてないが、触ったりして壊れたり寄り掛かって崩れたのでは困るので、相応の強度はある。


「ここまでしなくても、良かったんじゃない?」

「立体映像に合わせるには、それなりの物にしないとあかんやろ。まあプラモデルみたいなもんだな」

去年に続き立体映像とリアルの融合がウリの一つなだけに、外装の見た目は少女達がびっくりするほど端から見ると精巧に出来ていた。

ただ横島は昔から手先は器用でミニ四駆の改造やプラモデルを作るのは得意なので、その感覚で作ってるだけだったが。

何だかんだと凝り性な横島なので、細かいところにいろいろと手を加えてるうちに時間がギリギリになっている。

普通の文化祭では誰もここまでしないが、麻帆良祭ではあちこちで同じ規模の仮設の建築物があるのが現状だ。

ある意味、横島という男ほど麻帆良が似合う男は居ないのかもしれない。


「あやかちゃん! もってきたよ! 」

「ありがとうございますわ」

一方あやかに叱られたことを喜んだタマモだが、あやかと仲直りしようと考えたのか、積極的にあやかの手伝いをしていた。

あやか自身には含むところはないし、気にしてないのだがタマモの方が意外に気にしてるらしい。


「今年は徹夜しなくて済むかな?」

「無理じゃない? 明日一日で終わる?」

「本番直前に徹夜しなくていいだけ、楽よね。」

そして全体の進捗状況だが、今日か明日に一回は徹夜しないと流石に間に合いそうもなかった。

本来は中等部は前日以外は夜間の作業場禁止されているが、プレオープンを五日程用意してる関係で、それ以前に徹夜が必要になっている。

内装の方は超鈴音と葉加瀬を中心にが立体映像の投影機の設置を含めて頑張っているが、こちらもギリギリになりそうな状況だった。


「てつや? こんどこそ、わたしもおきてる!」

ちなみに徹夜することにやる気と執念を燃やしてるのは、タマモである。

最近は忙しくなり行かなくなったが、図書館探検部にて何度も徹夜にチャレンジするも成功してないので徹夜したいらしい。

とはいえ幼いタマモに徹夜は、まだ無理そうなのが現状だが。


「夜は冷えるので、毛布とか持って来た方がいいでしょうか?」

「そうやな。タマちゃん寝ちゃいそうやし。図書館島の地下は結構暖かいんや。ここやと寒いと思うわ」

さよと木乃香は徹夜に執念を燃やすタマモを微笑ましげに見ていたが、寝ちゃった時の為に暖かくするものを用意しようと話していた。

本当はタマモは家で寝た方がいいが、仲間外れにされるのは嫌だと怒るのが目に見えている。

とりあえず風邪だけは引かないようにと、二人は笑いながら気を付けることにしていた。

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