麻帆良祭への道

その日の夜、横島は店のカウンターで麻帆良祭の予定を立てていた

あの後千鶴とまき絵に触発されたように、美砂や茶々丸などにイベントに誘われたのだ

流石に誘われたイベントが多くなって来たため、早めにイベントの時間を確認して予定を立てようとしていたのである


「やっぱ誘われた以上、飯でも奢らなきゃダメだよな~」

予想以上に女の子との約束が増えたことで横島は本当に嬉しそうだったが、彼女達に最低限ご飯くらいは奢らないとダメかとイベント周辺の飲食店を探していく

当日になって店を探すのは大変だからと事前に店を探しておく辺りは、相変わらずマメな男であった

麻帆良祭限定メニューや人気のデザートなど、彼女達が喜びそうな店をピックアップして頭に入れている

間違っても自分がモテるとは考えられない横島にとって、女の子が喜ぶことをするのは必要不可欠なのだろう


「いらっしゃい。 顔色良くなってよかったっすね~」

そのまま麻帆良祭のパンフレットやガイドブックを見ていろいろ考えていた横島だったが、そんな時にやって来たのは刀子だった

前回とは見て分かるほど顔色が良くなった刀子に、横島はホッとした表情を見せる


「おかげさまでね。 これたいした物じゃないけど、この前のお礼に……」

ホッとする横島と対称的に、刀子は落ち着かないような様子で小さなプレゼントを渡す


「俺にですか? いや~、嬉しいっすね。 さっそく使わせて貰います」

刀子がプレゼントしたのは普通のハンカチだった

仕事をしながらいろいろ考えた末に、結局は簡単なお礼を持参することにしたらしい

本当はケーキやお酒などの方が重くならなくていいのだろうが、店にある物を持参する訳にもいかないためハンカチにしたようである

まあハンカチなら邪魔にはならないし、高すぎず安すぎない物をと考えたらしい


「夕食っすよね。 何がいいですか?」

貰ったハンカチをさっそく使うからとポケットに入れた横島は、刀子に食べたい物を尋ねる

今日の日替わりメニューは関西風のうどんなのだが、今日は午後から店を閉めていた為に残ってなかった

横島はハンカチのお礼に食べたい物を作ると言うが、刀子は何でもいいからご飯に合うおかずをと頼む


(ここに来るとなんか落ち着くのよね……)

結局今日も来てしまったことに少し複雑な刀子だったが、疲れて帰って家で一人レトルトや弁当を食べるのは嫌だった

前回の魔法料理以外でも。横島の料理は刀子の体調や気分にピッタリな物が多かったのだ


刀子は全く気付いてないが、それは刀子の体調や気分が横島に見抜かれてる証でもあった

能力を使うまでもなく最低限の情報が見えてしまう横島は、普段は意図的に見ないようにしているが料理をする時は参考にしている

元々高い料理の技術に加えて最近常連には相手に合わせた料理を出す為に非常に評判がいいらしい


(あまり深入りしないように気を付けないと……)

やはり横島には深入りしないようにと心に決める刀子だったが、反面では心のどこかで関係が進展がないかと期待してしまう自分もいた


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