二年目の春・8

お昼の少し前になると仮設店舗の隣にある雪広グループのイベントブースでは、早くも二百人以上の行列が出来ていた。

横島や夕映やのどかなんかは顔見知りもちらほらと見かけるが、数百キロの大きな生の本マグロが登場すると会場は歓声が起きる。

「本日は明後日よりマホラカフェの横島シェフと近衛木乃香さん。超包子の超鈴音さんと四葉五月さんがマグロの解体を行います」

今回のイベントは雪広グループのパビリオンや物品販売ブースの宣伝を兼ねていて、当然ながら少女達の仮設店舗も宣伝の一貫に含まれている。

大学部で人気の超鈴音に加えて何かと話題の横島や料理大会の優勝者である木乃香と五月と、麻帆良でも豪華なメンバーが揃っただけに噂を聞き付けた人が今も続々と集まっていた。

横島も木乃香も超達も麻帆良祭ではあちこちからイベントのゲストなどで呼ばれたが、横島達は基本的に全部断り超達も時間の都合ほとんどは断っている。

奇しくも今回のマグロの解体ショーで横島達は相応の集客力を見せつける形となった。


「おっきい、まぐろさんだ!」

「本当ね。あんなの捌くの大変そう」

直接捌くのはほとんど横島がすることになるが、超鈴音が助手をして木乃香と五月が手伝うことになる。

マグロは丼にして配付する予定なので、他にもあやかや千鶴なんかはそちらの手伝いをしていて、タマモも明日菜と一緒にマグロの解体をする横島達を見ながら手伝っていた。

横島は相変わらず何処かで聞いたような漫才師のようなネタを挟みながらマグロを解体していて、超鈴音がちょうどよくツッコムので会場からは笑いが起きている。

あとは得意のマジックも交えて拍手が起きたりもしていて、そちらも好評だった。

取り立てて珍しいとか物凄く上手い訳ではないが、マグロの解体をしながらだとよくウケるらしい。


「あの、一緒に写真撮ってもいいですか?」

「いいよ!」

一方明日菜と手伝いをしていたタマモの存在が見付かると、一部の女子大生や女子高生が集まりタマモとの撮影会が何故かはじまる。

何処からか広まった幸運を呼ぶ少女の噂は、着実に広がってるらしい。

タマモとしてはお願いされたからと、すぐに了解してしまったが。

これに慌てた明日菜と夕映は、騒動にならないようにと人を整理したり何故か写真の撮影係りになったりと忙しくなる。

まあ最終的に百人近くと一緒に写真撮影をしたタマモは、なんでみんな自分と一緒に写真撮りたいんだろうと、不思議そうにしていたが。


「ふー。タマちゃんも麻帆良祭期間中は一人に出来ないわね」

「そうですね。一人の時に人が集まれば大変なことに」

ただ明日菜と夕映は意外なほど人気が出てしまったタマモに、せめて麻帆良祭期間中だけでも一人での散歩は控えさせようと話をすることになる。

この時期みんな妙にテンションが上がり騒ぎになる可能性が高く、タマモの場合は人懐っこいので騒ぎを助長させる危険があった。

それに麻帆良祭期間中は麻帆良の外からも人が多く来るので、いつもより少し治安が悪くなる時期でもある。

大丈夫だとは思うが、念のため二人はタマモに麻帆良祭期間中の注意事項を改めて言い含めることにした。


35/100ページ
スキ