二年目の春・8

「いっらっしゃいポー」

その後もタマモとアナスタシアの散歩は続くが、妙に流行ってる屋台があり覗いて見ると三十代くらいの外国人風の男性がカレー焼き鳥という珍しい物を販売している。

しかも男性はタマモとアナスタシアを見ると、一瞬ビックリしていた。


「はにわさん?」

「だな。」

「しー! それは秘密ポー!」

言葉の語尾に何故か『ポー』と付ける変な男性に、麻帆良の人々は外国人だから言葉が変なのかとクスクス笑っていたりするが、タマモとアナスタシアはその正体にすぐに気づいたらしい。

タマモは匂いでアナスタシアは気配で、なんとなく正体を見抜いたらしい。

実は麻帆良祭が間近に迫り、麻帆良には人の姿になったハニワ兵達がすでに来ていた。

特に麻帆良祭で自慢の料理を披露したいハニワ兵なんかは早くも屋台を出しているので、あちこちで変な外国人の屋台が増えていたりするが。


「うむ。 確かに美味いな。 美味いが……」

焼き鳥はカレーのピリッとした辛さが肉にマッチして美味しいのだが、何故ハニワ兵がこんな場所でわざわざ屋台を出してあたるのかアナスタシアは理解に苦しむ。

何かの任務かと一瞬考えたが、イキイキと焼き鳥を焼くハニワ兵の様子から違うと判断する。


「はにわさんもおまつりにきたいんだね!」

ただその答えに先に辿り着いたのはタマモだった。

アナスタシアからすれば、わざわざハニワ兵が人に化けてまで麻帆良に来なくてもと思うが。

ハニワ兵がお祭り好きというか、楽しむこととかが好きな性格なのは理解している。


「面白そうだな。 他のやつも探してみるか?」

「うん! はにわさんをさがそう!」

秘匿すべきハニワ兵を表に出す横島にアナスタシアは軽く呆れていたが、ハニワ兵がどうやって麻帆良に紛れ込んでいるか興味はあり、タマモと二人で散歩を兼ねてちょっと探してみることにした。


「あれもだな。」

「うん。はにわさんだ!」

この時期一番賑やかなのは早くから準備してる大学部のエリアで、ハニワ兵は結構早く見つかる。

ハニワ兵の形をしたカステラを売ってる屋台とか、ハニワ兵の形をしたアイスを売ってる屋台とか、ハニワ兵の着ぐるみを着てハニワ兵の絵の描かれた風船を配ってる人とかあちこちにいるのだ。

みんな言葉の語尾に『ポー』を付けるので、見つけるのは簡単であった。

彼らの影響で今年の麻帆良祭はやけにハニワに拘る店が多いと、密かに大学生達の話題になっている程だ。

隠れる気があるのか無いのか分からないところは横島と同じであり、アナスタシアは半ば呆れながらハニワ兵達を見ていた。


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