二年目の春・8

「すいませんね。 手伝ってもらって。」

「いいってことよ。 知らない仲じゃないしな。」

クルト一派が崩壊していた頃。

横島は店を休んで、仮設店舗の内装や外装のゴムコーティングを行うことにした。

一緒に作業するのは大学部の土木部のメンバー数人で、超鈴音が頼んでいた人達になる。

横島自身も昨年の納涼祭を一緒にやった人達なので顔見知りであり、彼らの暇な時間であり天気がいいこの日の朝から作業をすることになったのだ。


「わっ!」

「アハハ。 塗料は匂いがキツいからな。 触ったり舐めたりしたらダメだぞ。」

特殊なゴムコーティングの液体をスプレーのように吹き付ける器具に入れて準備をする大学生の作業を、タマモは間近で興味深げに見ていたが塗料の強烈な匂いに慌てて逃げて行き横島の影に隠れた。

嗅覚が人より鋭い分、タマモは少し刺激臭が苦手だった。


「よしやるか。」

場所は仮設店舗近くの屋外で、ビニールシートの上で次々に塗装していく。

乾かす時間も必要なのでこの作業は早めにやる必要があるし、匂いを消すためにもしばらくは屋外で放置しておかねばならない。

すっかり匂いが気になり離れたところから見てるだけのタマモに横島や大学生達は笑みを見せながらも、塗装作業を進めていく。


「どうしたんだ?」

「においがすごいの!」

途中店が休みで暇なアナスタシアが見に来ると、珍しく離れたところから見てるタマモに声をかけるも、彼女もまた匂いが苦手なタマモに少し笑みを見せて笑ってしまう。


「ここから見てるだけではつまらんだろう。 少し散歩に行くか?」

「うん! いく!」

近寄ってみたいが匂いが気になるタマモの葛藤を理解したのか、アナスタシアはそのままタマモを連れて大学部の近辺を散歩しにいく。


「おお! アナスタシアさん!?」

「タマちゃんも居るな!」

アナスタシア自身も暇だっただけで特に他意はないのだが。

先日の野球観戦以来一気に有名になりつつあるアナスタシアと、幸運を呼ぶ少女と話題のタマモが一緒に居るんだから目立ってしまう。


「良かったら、来てください!」

「てめえ。 抜け駆けする気か!」

大学生達の情報伝達は早く、あっという間に二人は大学生達に囲まれてしまい、麻帆良祭の招待券やらサービス券やらを貰いお茶に誘われたりしていた。

アナスタシアもモテて悪い気はしないのか、相手をしてやっているが、個別の誘いは断ってく。

ただそこで理由に横島が居るからと告げてしまうもんだから、アナスタシアは横島を追い掛けて日本に来たんだとの噂が真実として大学生達の間でも広まってしまう。

結果として周りに美人や美少女が集まり、しかもみんなガードが固いとなると大学生達は必然的に横島を羨むことになる。

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